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その日の夜は、大学の寮に住んでいる兄貴が帰って、一緒に食卓を囲んだ。高校時代からラグビー部だった兄貴がいるだけで部屋が狭く感じる。食卓も兄貴の好きなホルモンとか肉じゃがなんかで、量もかなりのものだった。
「海人、野球残念だったな」
ラグビー部主将でインターハイまで行った兄貴に言われると惨めになる。「うん」とだけ答えて、おかずを口に運んだ。
「夏休み、何やってる?」
「なんも」
「高校でも野球続けるんやろ。素振りしとかな」
「続けるか分からん」
お母さんと兄貴が僕を見た後、一度目を見合わせた。それがやけに居心地悪かった。
ーーと、僕のスマホが着信音を鳴らした。
見ると、LENOさんからの返信が来ていた。思わず「あっ」と明るい声が出て、兄貴が「どうしたん」と覗き込んできた。
隠す暇もなく、僕とLENOさんのやり取りが見られて、体がカッと熱くなった。
「フォローしとる人からやん。ここ、行くん?」
兄貴は冷やかしもせず、寧ろうれしそうに尋ねてきた。注意されると咄嗟に思った僕は戸惑いながらも頷いた。
「近かったら、行ってみようかなって思って」
嘘ではなかったけど、絶対に行きたいという確たる想いもなかった。ただ、本当に「近かったら」くらいの気持ちだった。
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