納豆。のち、僕の小さな海

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「他県やね。ちょっと遠いし、着いてったろうか?」 「どこ?」  お母さんも口を挟んでくる。それに兄貴が答える。ちょっとした出来心とはいえ秘密のことだったのに、家族に公表されてしまった。例えて言うなら、宝石の煌めきがなくなってしまったようで、僕は不満顔でジャガイモを口に運んだ。 「海人、着いてきてもらったら。会ったこともない人でしょ。どんな人かも分からないよ」 「僕一人で行ってみる」 「心配だわ」  そう言われると思った。大抵、僕の計画は家族の心配に潰されてしまう。 「いいやん。一人で行ってみたら」 「えっ?」  兄貴はガツガツ食べながら言った。 「海人もガタイいいし、もう中3やし。日帰りで行けんこともない距離やし」  あと「やることもなさそうやし」と余計な一言を付け加えて烏龍茶を飲む。  お母さんは兄貴を見た後、僕の方を向いた。 「計画立てたらちゃんと道順とか教えてくれる?」 「分かった分かった」  胸に再び灯った火。それがこそばゆくて、お母さんから見られないように茶碗で顔を隠すように米を掻き込んだ。
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