納豆。のち、僕の小さな海

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 食事の後はいそいそと台所のテーブルを離れ、居間の隅で地図や交通機関の確認をする。兄貴たちの近況報告なんかは全く耳に入らなかった。  僕の家の最寄駅から電車で市内中心に行き、それから新幹線に乗ったあと、ローカル線に乗り換えるようだ。 「片道1万円以上するとか〜」  小遣いは野球部での分しか使わなかったけれど、そんなに貯金があったっけ。タンス貯金を確認すると、何とか九千円ほどはあった。鞄の底にもお金は落ちていない。その様子に兄貴が気づいたようで僕を指さして笑った。 「おっ、金不足や」 「うっさい」 「いくら足りないの」とお母さん。 「1ま...2万」 「何で水増ししとるとや」 「兄貴は黙っとれ。なんか予想外のことだってあるかもやん」  あくまでも上から目線の兄貴にイライラしていると、お母さんは「祥太やめなさい」と制してくれた。 「海人(あんた)が大学行くためのお金貯めてるから、そこからなら出してもいいよ」 「えっ!?」  思いがけない助けに顔をあげると、お母さんはVサインしてドヤ顔で笑っていた。 「お母さん、ずっと仕事で海人をどこにも連れてってやれなかったから。家計から出してやれなくて悪いけど」 「や......んなこと」 「母は偉大やね」  兄貴はホルモンをまた突きながら口だけ笑っていた。
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