胡瓜竹輪

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胡瓜竹輪

 西村の稼ぎは良い。事務所に張り出される実績(売り上げ)順位では140人中、15位を常にキープしていた。 タクシードライバーはただ街を走っているだけでは閑古鳥、客の手が上がりそうな場所や時間帯を考えて無駄なくタクシーを走らせれば自然と売り上げも多くなる。  依って実績から諸々差し引かれた手取りも悪くはなかった。 子どもが生まれた事もあり、2年前に手狭なアパートからこのマンションに引っ越した。濃い赤茶色の煉瓦を貼り付けた”ダイアパレス金沢”の築年数はそこそこ古く、エントランスもオートロック式ではなかったが贅沢は言っていられなかった。それでも6階のベランダからは医王山や片町の夜景が見渡せ、夏には犀川に打ち上がる花火を楽しむ事が出来た。 また、タクシー会社から歩いて10分と徒歩で通える、それがこのマンションを選ぶ決め手となった。 「ただいま帰りました〜っと」  玄関の扉を閉めるとベランダで洗濯物を干していた嫁が振り返った。 (とも)は俺の2歳年下で恋愛結婚、現在専業主婦、髪は黒く肩までのボブ、目は奥二重で個性的な顔立ちをしている。 ウェストは、胸も尻も大きく、お世辞にも線が細いタイプとは言い難い。太ももを汗が流れる。 「お帰りなさい。遅かったね、何かあったの?」 「朝イチの予約配車で山代行って来た」  ジャケットをハンガーに掛けエアコンのリモコンを押す。  智は電気代が掛かるからとエアコンは寝室だけと決めているが仕事上がりくらいは許して貰おう。  寝室を覗くとカーテンが引かれた薄暗い部屋の敷布団の上で、腹に白いタオルケットを掛けた息子がスヤスヤと寝息を立てている。起こさないようにそっと襖を閉める。 「ええ、山代ぉ、頑張ったねぇ」 「褒める?」 「褒める、ほめる」  臙脂色のネクタイを外すとリビングの真ん中に置かれたベージュの革のソファに放り投げた。  冷蔵庫のドアを開けると冷気が汗ばんだ首筋を撫でる。そこにはキンキンに冷えた缶ビールが今か今かと俺を待っていた。ご丁寧な事にグラスまで冷やしてある。出来た嫁だ。 「シャワーの前に一杯だけ飲むわ」  プルタブを開ける、プシュッと飛び散る泡、夜勤明け、この瞬間が堪らない。コップに注ぐ時間も惜しく水滴の付いた缶のまま、黄金色の液体をグイッと喉に流し込む。 「うめえ、生き返るわぁ!」 「じゃ、軽く何かおつまみ作るわね。胡瓜竹輪で良い?」  そう言うと(とも)は冷蔵庫から竹輪と胡瓜を取り出しキッチンに立った。まな板の上で棘が付いた新鮮な胡瓜を手際よくサクサクと縦に切り、ビニール袋を開いて竹輪を取り出す。一本、また一本と竹輪に挿し込まれる胡瓜。 「あ、ダメだって」  西村は智の背後に立つと青いギンガムチェックのエプロンを捲り、デニムのスカートの裾に左手を滑り込ませた。汗ばんだ太ももを指先がジリジリと這い上がって行く。 「良いだろ、俺、疲れてるんだよ」 「なら、おとなしく座ってて」 「もう勃ってる」  黒いカットソー半袖Tシャツの上から胸を揉みしだき指先でブラジャーを下げる。既に乳首が膨らみ、そっと摘むと掠れた声が漏れて手に持っていた竹輪がコロコロと床を転がった。 「ダメだって」 「そんな手付きで胡瓜挿し込むお前が悪い」 「何、馬鹿じゃないの?」  黒いパンティの隙間から指を入れ、茂みを探って突起の上で円を描く。智は思わず踵が上がり爪先立ちになる。スリッパがぱたりと音を立てる。 「駄目だって、(こう)が起きちゃうから」 「起きないように声、出すなよ」 「無理」 「無理じゃない。」  智の匂い立つ首筋に誘われ軽く口付けた。 「あ」  舌を這わせ肩甲骨の窪みを丁寧に舐める。淫部が震え、その瞬間を待ち焦がれている。先ずは人差し指をゆっくりと挿し滑り具合を確認する。 「・・・・ん」 「声、出すなって」  次に中指、ズブズブと中に呑み込まれる感覚に西村の体温が上がる。エアコンの風が心地良い、付けておいて正解だった。カーテンが揺れてフローリングの床に波を作る。 「あ」 「動かすぞ、声出すなよ」  西村はぐちゃぐちゃと音を立てる膣の感触を味わいながら、指をゆっくりと出し入れした。背筋を這い上がる快感に堪らなくなった智は片足の指を使って器用にパンティをずり下ろすと腰をくねらせた。 「・・・・裕人、もう」  右の親指と人差し指で豊満な胸を擦り乳首の周囲を優しく撫でる。喘ぎ声を漏らすまいと紅潮した智の顔が歪んだ。 「ん。も」 「駄目、もう少し」  湿り気でふやけた指を浅く深く挿入すると、ぬちゃぬちゃと淫靡な音が蝉の鳴き声に合わせて静かな部屋に響いた。西村は智の体内から指を引き摺り出すとベルトを外しチャックを勢いよく下げるとスラックスとトランクスを太ももまで降ろして彼女の腰を引き寄せた。 「・・・・ん」 軽い喘ぎ声、形の変わったそれを淫部に当てがい、ぬるりと挿入する。 「あ」 「だめ・・・だって・・・洸が起きるだろ。声出すなって」 「だ・・・・・・」 「出すな」  ベランダの壁に止まったアブラゼミが、腰を振る2人の動きに合わせて強弱を付けて鳴き始めた。   智はキッチンのシンクの縁に掴まりながらゆっくりと出し入れされる西村を受け入れて悶えていたが、西村の脳裏には桜色の髪を振り乱し、赤いワンピースを捲り上げられた金魚がビチビチと悶える姿が浮かんでは消え、それは白濁とした液となり智の太ももを伝って落ちた。
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