知性の雫

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 翌日、男が出勤すると、社長室に行くようにとのメモがあった。  以前にも、このようなことがあったと思い出しながら社長室に入ると、やはり女も居た。  きょうから教科書を暗唱するということは既に社長の耳に入っていた。教科書全てを暗唱できるようになるには相当の時間を要するので、これを機会に結婚して、じっくり取り組んではどうかと社長が提案した。ふたりは快諾した。  新居はクラブのママが手配してくれている。家政婦も付くので安心して暗唱に集中できる。一週間ふたり一緒に休んでのんびりするようにとのことであった。  女はクラブを辞めることになり、その夜はクラブで送別の宴が盛大に行われた。  一週間後、ふたり一緒に新居から出勤し、小学一年の国語の教科書の暗唱が始まった。  女が最初の一文を暗唱する。続いてふたりで暗唱する。それから男が暗唱するのだが失敗したら出来るまで繰り返す。  次の文も暗唱できるようになると、ふたつの文をまとめて暗唱する。  こうして一文ずつ増やしていき、一頁暗唱できるようになると、二頁めの最初の一文を暗唱する。  二頁めが暗唱できるようになると、二頁まとめて暗唱する。  この調子で一冊暗唱するには相当の時間がかかる。  適宜休憩しながら午後五時まで暗唱に没頭している。  何日かかっても全部暗唱できるようになりたいと決意して、ふたりは新居へと帰っていった。  開発部は新しい画像データの解析に追われている。
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