知性の雫

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 翌日、男は出社するや否や女の店に電話した。女が案内してくれるというので訪問することにした。男は父親が経営する会社の企画部所属になっているので、平日の九時に出社さえすれば良く、あとは自由に会社の経費で企画活動できる。  昨夜の銀座のクラブも企画活動になる。  男は次男で、会社は兄が継ぐことになっている。子供の頃から勉強が嫌いで、遊んでばかりいた。いわゆる落ちこぼれである。それでも大学までは親が言うがままに通った。就職活動する気もなく、父の会社に転がりこんだというわけである。  そんな男が女の声に惚れ込んだ。電話での声も抜群だった。女の店への訪問は外勤扱いになり、そのまま直帰すると会社に告げて、男は女の店へ軽やかに向かった。
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