知性の雫

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 十七時になると女は朗読を終えた。男は女と夕食をともにして銀座のクラブに移動した。  女が男の会社に出向という形になった事はママの耳にも届いていた。  父がクラブに出資していて、いわば雇われママなのだから知っていて不思議はない。  父は女の店にも出資していて、女を新人ホステスとしてクラブに入店させ、声で息子を虜にし、女の店との共同研究に役立てようとする企画は成功したことになる。  女も仕事のあと男とクラブで談笑するのが好きになったようで、当面は一日の半分ほどは男と過ごすことになる。  もちろん男は女の声を毎日堪能するのが仕事になっているのであるから大満足している。
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