知性の雫

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 その頃、男の会社の開発部は膨大な朗読データの解析に追われていた。  女の朗読する声の間合い、ゆらぎが分析される。あわせて男の脳波との関係も解析される。  女が朗読している部分だけをつないで朗読用教材も作られた。  女の声の特性はAIが読み上げる音声に反映され、あたたかみのある人間の声に近いものになった。女の会社との共同研究にも役立っている。  女の音声を文字にする研究から、耳の聞こえない人へ字幕を提供する眼鏡も開発されている。  眼の見えない人用の眼鏡から見える画像をもとに、音声でガイドしイヤホンで聞いてもらうシステムも開発されている。  これらの研究に欠かせない貴重なデータのおかげで、男は連日朗読にクラブにと励んできた。  父にも後継者になる予定の兄にも男の功績は認められている。  なお外国語については、別チームが開発していることから今回の朗読から除外された。
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