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羞恥
小学生の頃、密かに片思いしていたユースケ君の前を、下手くそな平泳ぎで溺れかけた時は恥ずかしかった。
働き出して、スカートのファスナー全開で澄まして歩いていたら同僚に苦笑いで指摘されて顔から火が出た。
でも絶対、今の方が恥ずかしい。
恥ずかしすぎて……多分気を失える気がする。
そもそも、病院の仕事を辞めてこんな仕事を選んだ所から間違ってたんだろうか。
いやいや、それに後悔はないけど。
「…………大丈夫?」
「……は、い、すみません」
今、森川 柚は両手に抱えた荷物を死守しながら、綺麗に転げ。
お届け先のお客様の前で仰向けに倒れている。
初めて届けるお宅だったから、ちょっと注意不足だった。
雨上がりの地面に足を取られた、半分受身は取れたんだろう、頭は無事だった。
いたた……お尻と右肘が痛い。
やっと上半身を起こして、玄関のドアを開けたまま引き気味に見下ろしている家主と目を合わせる。
「お届け物でーす」
中身の確認をしてもらわないといけない。
柚は心の中でため息をついた。
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