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歩いても歩いても抜けないその空間。 私はもう、諦めかけていた。 そんな時、船を漕ぐ船頭がやって来た。 「どうしたんですか?」 「娘を探していて……」 「この船に乗っていけば出会えますよ」 「本当ですか!」 「お代はこんだけ」 船頭は六本の指を立てていた。 今手持ちはないのだが、どうすれば……。 「お客さんのポケット、その中に入ってるので大丈夫ですよ」 そう言われ、ポケットを弄ると六枚の貨幣が出て来た。 いつのまにこんなものを入れただろうか。 とりあえず船頭に渡した。 船に乗ると、ゆらゆらと動き出した。 「どちらへ?」 「さあ、私にはわかりやせんよ」 そして、着いた先には野原が広がっていた。 船頭が降りるよう促してきたので、降りた。 無数に人がいる。 ここに娘はいるのだろうか。 歩いていく。 ただただ歩いて、銀髪の少女を探す。 その時、突風が吹いてきて、潮の香りがする少女が歩いてきた。 「あなたは誰?」 「結由……」 「コウタはどこ?」 「結由だよなぁ……!」 「私は何?」 「返事をしてくれよ!」 「ここはどういう?」 「お願いだから!」 その瞬間、世界は音を立てて崩れ、真っ暗闇へと消えていった。 そして、目の前には結由がいる。 「あなたが全部悪いの。あなたが悪いのよ。」 なんのことかさっぱりわからない。 「この世界も、昔の家族も、すべてあなたが壊したのよ」 そんなことは…… 「あなたが未熟だから。あなたに非がありすぎたから。」 なんなんだ! なんなんだこれは! 「覚めない夢を一生見続けてればいい」 そして、私は糸が切れたように、沈んでいった。
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