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ある日コウタは来なくなった。 またあの日々が戻ってきた。 押し入れの中でひっそりと息を止める。 誰にも見つからないように、誰にも迷惑をかけないように。 死にたい その言葉を吐くのは簡単で、やるのは難しい。 だから、誰か一緒に死んでくれる人がいたら、できると思った。 赤信号をみんなで渡れば怖くないのと同じで、誰か……。 「僕といっしょにやろう?」 誰にも見つかったことない押し入れで、コウタが手を伸ばしてくる。 手を取って、二人で走り出した。 青くて深い場所に。 私自身を押し殺して隠そう。 大丈夫。コウタも一緒だから。 一緒に生の深淵まで行こう。 意識を離すのは一瞬で、沈んでいくのはゆっくりで。 誰も見たことのない最高の笑顔で私は沈んでいった。
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