雨に打たれながら「子供を生ませて」とすがる彼に孕ませた「それ」②

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雨に打たれながら「子供を生ませて」とすがる彼に孕ませた「それ」②

ゆっくりとドアが開き、水を滴らせる音を立てながら、だれかが入室。 土砂降りのなか、傘をささず、合羽も着ないで教会にきたというのだろうか。 「冷やかしか?」と疑い、話しだすのが遅れて「牧師さま、俺・・・」と先に語られる。 「強い子供を生みたいんです。 女性に生んでもらうのではなく、俺が孕んで生み落したい」 こめかみを引きつらせ、手で胸でかきむしるも、一旦、息を吐き「どうしてですか」と静かに問いかける。 「家族に恵まれなかった俺は、早く結婚して子供をもうけて、自らの手で幸せをつかみたかったのです。 その願いを神さまは聞き届けてくれたのか、最愛の女性と結ばれ、時間はかかりましたが、男の子を授かりました。 ただ、妻は妊娠したと同時に病にかかってしまい・・・。 なんとか治療で体をもたせて、出産にこぎつけたものを、生まれる直前に妻も胎児もあの世に。 この世でもっとも愛する妻を亡くして、俺の生きる意味はなくなりました。 ですが、死んでも死にきれない未練はあった。 生まれてくる子供と会いたかったと。 できれば、天寿をまっとうしてほしかったと。 だから、強い心身を持つ子供を、俺が生もうと思ったんです。 俺は頑健なのだけが取り柄の男で、妻のように病気になったり、出産の負担で死ぬことはないでしょうから」 平坦な口調で語るのに、背筋が震える。 「男は子供を生める体の構造をしていない」「そもそも神には、お考えがあって男に子宮を与えなかった」とまっとうなことを告げても、聞く耳を持たなそう。 大体、罪の告白ではないし、本来、生めない男が、出産を望むことの葛藤がなく、まるで迷いもなさそうだし。 男は心が壊れた狂人なのか、成仏できずにさ迷う魂なのか。 どちらにしろ、ただならぬ、おどろおどろしさが木の格子越しに伝わり、なかなか口を開くことができず。 いつもなら猫をかぶって二枚舌を駆使し、どれだけでも、いいくるめられるはずが。 心が乱れるのを、なんとか宥めて「この男の目的は?」と考える。 「まさか・・・」と息を飲んだところで「俺が欲しいのは強い遺伝子です」と木の格子に顔を近づけ、息づかいを荒くする男。 「異常なまでに、並々ならぬ生への執着があり、どんな苦境でも、なりふりかまわず生き延びようとする貪欲さを持つ。 ああ、牧師さま、あなたの尋常でない屈強な素質を子供に受け継がせたい・・・」 やはりそうかと、奥歯を噛みしめ、ぎりぎりと。 いやな予感がしかしないものを、一応「そんな」としらばっくれてみせる。 「わたしは命を捧げるように神に仕え、命を削るように人民に奉仕をする者ですよ。 もし、だれかが危機に陥れば、惜しみなく自らの命を差しだすことでしょう。 己の命をかろんじるわけではないが、人のために捧げるのをためらわない。 あなたの子供にはそんな風になってほしくないんじゃないですか?」 もったいぶって告げるも、しらじらしいのが丸分かりか。 「いやいや、そんなご謙遜を」と笑いが漏れる。 「あなたは関東で名を轟かせる権田組の、組長のお気にいりで、血も涙もない狂犬だったのでしょ? 鬼のように規律が厳しい権田組で生きぬき、成りあがった処世術には感心しますし、足抜けは許されないはずが、こうして五体満足に牧師に転身したサバイバル力もさすがです」 全身の血の気が引いたが「いや、追手ではないな」と拳の力を緩める。 追手だとしたら、俺に気取られないよう捕縛、連行するはず。 相手が何者にしろ、今の平穏な日々を脅かす存在にはちがいない。 腹の底からため息をついたなら、にわかに顔を強ばらせて「脅して俺に抱かせようってか?」と口調も荒っぽいものに。 「・・・あいにく、脅すことはできないでしょうね。 妊婦用のワンピースを着て、雨が降る町を徘徊する男の戯言なんか、だれも信じないでしょうから」 気づかれないよう、ほっとするも「なに真に受けてんだ」と自分にツッコミ。 男が男とエッチして孕むわけがない。 分かりきっているはずが、どうもこの男の熱弁を聞いていると洗脳されていくような。 「俺は今、まともな判断ができる状態でない」と自覚しつつも「俺との子供なんてやめたほうがいい・・・」と真面目くさって説得を。 「俺の腐りきった血を受け継いだら、とても社会に馴染めないし、周りから生まれてきたことを祝福されるどころか、呪われるほどの害悪になるだろう。 もとより、俺には子供をもうける資格はない」 うつむいて、ぼそぼそと語れば「分かっていないですね!」と男は木の格子をつかみ喚きたてる。 「念を押しますが、俺は強い子供がほしくて、その子には天寿をまっとうしてほしいでんすよ! もし周りが子供を受けいれず、排除しようとするなら、そんな社会をぶっ壊してでも生き延びようとする強靭な心身がいるんです! 自分が生きるためなら、人の命を踏みにじるのをためらわず、哀れみや悲しみに惑わされず暴力をふるい殺人をする! あなたは、自分のしたことを罪深いものと考え、後悔しているのかもしれないが、俺の子供には同じように逞しくなることを願ってやまない!」 「なにも知らないくせに!」と怒鳴りかえしそうになったのを、寸でで飲みこむ。 告解室で意見をぶつけあっていても埒がない。 きっと、どう訴えても盲目的な男は引きさがらないだろうし、牧師である俺のほうが罪を告白するなんて阿呆らしい。 杉山さんの話の通りなら、男が出現するのは雨の日だけ。 口づけをされなければ、正気を失うことはないのだし、近づかせないよう逃げて、雨があがるのを待ってはどうか。 たとえ狂言だろうと、うかつに男に俺の体を触らせないほうがいいだろう。 俺の自虐的な発言によって、火がついたように、まくしたてる男のようすをしばし窺い「ああ!神さま!」と天を仰いだところで、そっと扉を開けた。 扉の隙間から足を踏みだすと、とたんに走りだす。 が、ほぼ同時に隣の扉が開け放たれ、跳びだした男に抱きつかれてしまい。 そのまま床に倒れて、突き放そうとするも間にあわず、口づけを。 口内にねっとりとした甘い唾液が流れこみ、思わず飲みこんだら、喉が焼けるようにかっとし、その灼熱が全身に。 頭が沸騰して意識がとびかけ、俺の意思に反して、急激な勃起。 歯軋りして、ぎりぎりで理性を保つも、馬乗りになった男が煽るように笑い、ワンピースの襟元をずらして、豊満な胸を見せつけた。 「男じゃないのか!?」と驚いた一方で、本能的な衝動が湧きあがり、たまらず胸を両手でわしづかみにし、遮二無二揉みしだく。 「はあう、くう、ああ!おっき、おちんち・・いっぱ、いっぱあ、精子が、ふあああ」 胸を揉まれて悶えながら腰を揺らし、俺のそそり立つのに擦りつけて、じゅぷじゅぷとすでに水音。 その固さと形状からして男なのだろうが、妊婦用のワンピースをまとい、勃起しながら白い乳を揺らすさまは奇っ怪なようで、倒錯した淫らさが。 面妖な痴態にまんまと当てられ胸を揉みつつ、もどかしくなって、腰を突きあげれば「ひああ!強い、いい、強いのいい!子供にも、その強さをおおお!」と歓喜したように叫び、ワンピースのなかで射精。 かまわず胸を揉み揉み、乳首をぴんぴん指で跳ねると「あう、うう、あふうう!」と辛そうな顔をし、でも、体を震わせながら尻をあげる。 スカートをめくって尻の奥に指をいれ、かき回して広げているようで、ぶちゅぶちゅじゅぱじゅぱ。 あんあん鳴いて、顔の近くで胸を揺らすものだから、たまらず乳首に吸いつき、牛から搾乳するように盛んに愛撫を。 床に片手をつき、もう片手を尻に当てて、指でいじるのは大変そうだったが、腰を突きあげて先っぽ同士を擦りあわせるたび、乳首を噛むたびに「うんくあああ!」と俺の腹や股に笑いながら精液を降らす。 牧師でありながら、垂らした乳を揺らし腰をふる男を仰ぐに、腐臭がするような欲望が溢れてやまず。 口づけで飲まされた甘い唾液の効果もあるのだろうが、妻を亡くしてから禁欲的な生活をしていた、その反動なのか。 熱に浮かされるまま行為に耽っていたのが、ふと、そのとき「そうだ!妻だ!」とすこし我に返って。 ぼやけていた視界がクリアになり、あらためて目にしたのはおもむろに上体を起こして、膝立ちをする男。
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