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恋人と送るオンラインのスローライフを18禁のホラーに塗りかえないでくれ④
そりゃあ、嘲笑って犯す狼男も、快感に屈してヨがる俺s自身も憎たらしかったが、なにより、浮気男のもちもち肌が許せなくて。
何回もしつこく宣言したし問うたのだ。
「俺は死んでも浮気しないし、浮気されるのを許さない」「きみには本当に恋人はいないんだな?」と。
どうして、浮気にそこまで神経質になるのか、その理由も心をこめて説明したつもり。
俺の両親は二人とも浮気をしていた。
二人同時に浮気がばれて離婚。
父も母も浮気相手と再婚をし、俺は祖父母の家へ。
祖父母と暮らしだしてから、両親は一回も会いにきてくれず、それぞれの家庭で子供をもうけ、幸せに暮らしていたとか。
なんて人生を歩めば、そりゃあ浮気アレルギーにもなるだろう。
おかげで二十五才になるまで童貞のまま、ほとんど恋愛もせず。
オンラインで「この人なら浮気しなさそう!」と思える運命の女性を見つけたと思ったら、正体は男で彼女持ちだったという。
とことん俺の人生は踏んだり蹴ったりだが、運がわるかっただけでは済まされない。
「浮気だめ絶対」と意思表示したにも関わらず、嘘を吐き二股をした相手に罪はある。
たしかに俺は浮気に加担したといえなくない立場だし、怨霊の彼女ほど、惨いしうちは受けていない。
それでも、形はちがえど、浮気によって心を切り刻まれ血を吐くような思いをした俺は、決して彼女の敵ではなく、痛みを分かちあえる同士といえるのに。
頭が沸騰してたまらず「く、くそおお!ど、どおしてええ!」とつい腰に力をこめれば「すごい、すごいぞ、ぐうう・・・・!」と狼男が大量に注入。
浣腸の比にならない刺激に「うう、気もちわるうう・・・」と率直な感想を漏らし、毛むくじゃらの厚い胸板にぐったりともたれる。
気分を害することなく、鼻で笑った狼男は二匹を退かせ、やんわりと揺すりながら「気にいった」と耳元で囁く。
「ほとんどのやつが、はじめは怯えきってろくに反応しないか、屈するまいと耐え忍ぼうとする。
で、結局、最後のほうは、滑稽なほど情けない痴態をさらすのだ。
最後まで反抗心をなくさず、殺気立つように悪態をつくなんて、お前が初めてだよ。
くふふ、そんなに睨みつけて・・・よい、よいぞ。
気にいったから、一つだけお前の願いを聞いてやる」
「お前を囮にして逃げた男を、ここらにいる全員で追いかけて食いちらしてやろうか?」と問われて、見開いた目をむける。
ゲームと同じく、犯されたあとで「道づれにしたいやつはいるか?」と本当に聞かれるらしい。
この報復措置があると知っていて、どうして、もちもち肌は裏切り行為をしたのか。
「報復される前に逃げきれると思ったのか?」と考えたら、さらに怒り火が燃えあがり「あいつだけじゃない・・・!」と魂の叫びを。
「この世で浮気するやつ全員死ねばいいんだ!
とりあえず、ここにいる糞ったれな浮気野郎たちを、できるだけ長く死なせないまま、いたぶりながら食ってしまえ!」
「苦悶しながら絶命した男たちの生首を持ってこい!」と命じれば「いいだろう」とにんまりとし、二匹をつれて縄張りの境界へと。
平原を囲む林にたむろっていた多くの狼たちも散らばり、それを見届けてから、重い瞼を閉ざした。
もちもち肌の斬首された顔を拝みたかったが、心身が疲弊しきっていたし、緊張の糸が切れたのもあって深い眠りに。
意識をとりもどすと、満月が輝く夜空を仰いでいたはずが、目のまえにはゲーム画面。
水辺に佇むもちもち肌に、サプライズをしかける直前のままフリーズしている。
「夢・・・だったのか?」と上体を起すと腰に激痛が走り、またすぐキーボードにうつ伏せ。
歯軋りをして呻きながらも、そばにあったスマホをとりあげ、ゲームの名前と「トラブル」とで検索。
検索結果で並んだリンクのタイトルはどれも「オンラインの呪いは都市伝説ではなかった!?」というものばかり。
その一つを覗いてみると、急すぎるゲーム閉鎖に至るまでの経緯が書かれていた。
俺ともちもち肌を含めて五人の男が、噂どおり突拍子もなく、不可解な言動をしだしたのを何人もが目撃。
噂を知っているうえ、リアルな相手の連絡先を知る人は、心配になって安否を確認したところ、俺以外、家で死んでいたという。
過酷な拷問を受けて絶叫しているような死に顔だったとか。
ゲームの中の四人は、血だまりに浸る白骨死体に。
四人も死者がでては、もうバグでは片づけられず、知りあいが死の報告をした時点で、会社はオンラインを閉じたとのこと。
ちなみに俺は、ほかのプレイヤーとのリアルなつながりがないため、生死不明となっている。
おかげでネットでは「せめて生きてろよ!」「生きていても、発狂してやらかしてんじゃあ!」と大騒ぎ。
いや、それよりも「噂では今まで一人死亡だったのに、今回は四人も!?どういうこと!?」と興奮しきりで喧々諤々。
スマホ画面に「たぶん、俺のせいだよ」と呟き、パソコン画面に向きなおる。
相かわらずフリーズしていたのが、すこしずつ、もちもち肌の顔がふりむき、チャットの囲いに文字が流れたもので。
「オンラインのゲームで鏡餅と出会って、きみこそ運命の人だと確信したんだ。
彼女との関係は冷めきっていたし、きみと出会ったことで男が好きなのだと認めることもできた。
彼女ときちんと別れて、自分が男だと打ちあけてから会うつもりだったんだよ。
けじめをつけるのに時間がかかっただけで、俺には浮気をしているつもりはなかった。
どうか信じてくれ。
俺がきみだけを一途に愛してしたことを」
遺言のようなものか。
それにしては、振りかえったもちもち肌は真っ赤な目から血を流し、恨めしげに俺を見ているが。
ほんのすこし惑わされたものを、狼男が迫る中、迷いなく突きとばした、あのときを思いだすと、急激に心は氷点下。
「もう騙されるかよ」と舌打ちをして、電源を引っこぬき、オンラインの恋人とおさばらをしたものだ。
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