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病院の地下迷宮をさ迷う犬人間たちに蹂躙をされて俺は目覚める①
俺はホモが大きらいだ。
この世から一人もいなくなればいいと思う。
世の中では多様性が求められ叫ばれているとはいえ、糞くらえ。
できるなら、ホモを一人のこらず滅亡させたいところ。
が、法に引っかかる以上、ホモのせいで自分の人生をおじゃんにするなんて、もってのほか。
罪に問われない方法で、ホモ撲滅活動に日々、従事していたのだが。
高校生になって、クラスにホモを見つけた。
名前は「保田(ほだ)」で、もちろんあだ名は「ホモダ」。
ホモダはたまたま俺が発見しただけで、学校にはまだ隠れホモがいるかもしれない。
そいつらを炙りだすため、また図に乗らないよう脅すため、ホモダをいたぶって見せしめに。
イジメ問題に発展して大人が騒ぎださないよう、あくまで、じゃれている風に見せてだ。
「いいよなあ!お前は今の時代に生まれたホモで!昔ならアメリカじゃあ逮捕されてたんだぞ!」とエルボーをかけたり。
「多様性がもてはやされて、ホモへのサポートやケアが充実して羨ましいなあ!国民の血税で擁護してもらう気もちはどうよ!」と肩を抱きながら肌をつねったり。
「今じゃあ性自認によっては男が女のトイレや更衣室にはいれるんだってよ!どーぞどーぞ!ホモダもどーぞ!」と女子トイレに押しこもうとしたり。
俺ら世代は、同性愛や性自認についての知識があり授業で教えられるほどだから、ある程度、理解が。
なので俺のように「ホモ、キモイ!」と率直に感想を述べるのは逆に珍しく、ホモダをかわいがっても、だれも加担することなく、疎ましそうに遠くから見やる。
快活で口達者な俺は、クラスのムードメーカーで皆から慕われていた。
が、ホモダをかまいだしてからは寄りつかなくなり、怯えるような痛々しいものを見るような目を向けるばかりで、挨拶もしやしない。
ホモが市民権を得た今の世では「ホモ死ね!」と罵る俺のほうが軽蔑されるのだろう。
まあ、ホモダを助けようとせず、見て見ぬふりをしつづけるクラスメイトも軽蔑に値するが。
物言いたげな顔をしつつ、俺が目をむければ視線を逸らす教師も腰ぬけで、俺らに手だしせず。
保田をいたぶりはじめてムードメーカーの地位から転落し、クラスで疎外され腫れもの扱いされるも、撲滅運動のためならなんのその。
ホモ撲滅隊は俺以外にも大勢いるし、ネットで頻繁にやりとりをして、ほほ毎日、活動報告も。
「今日は女子トイレの個室に閉じこめてやりました!」と知らせれば「よくやった!」と褒められ「そーそー近いうちに会わないか?」とお誘い。
メンバーは必ずホモを一人以上、連れてきての肝試しだ。
これもホモ撲滅の活動の一環。
というのも、肝試しの場所は精神病棟の廃屋で「昔、ホモが精神病人と見なされ閉じこめられていたらしい」と噂される怪談スポットだから。
「治療と称して虐待されたホモの怨念が、さぞのこっているだろうよ!
今は優遇されて、ちやほやもされているお前らホモを妬んだり、相当、溜まったまま死んだだろうから、襲ってくるんじゃないかあ?」
下から懐中電灯で顔を照らしてホモたちを怯えさせるメンバーを、指を差して笑いこける俺。
もちろん保田を連行してきていたが、メンバーとのおしゃべりに夢中になり放置。
目を放しても逃げるはずがない。
弱みをにぎって「逆らったらどうなるか分かっているよな?」と徹底的に脅しているし。
ホモ撲滅隊も同じようにホモたちを従えていたに、万が一にも逆襲されるとは思わず。
かつてホモを収容していた曰くありすぎな精神病棟に現代の甘ったれなホモを放りこみ、ホモとして生まれてきたのを後悔するほどの恐怖を味あわせる予定だったのだが。
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