病院の地下迷宮をさ迷う犬人間たちに蹂躙をされて俺は目覚める②

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病院の地下迷宮をさ迷う犬人間たちに蹂躙をされて俺は目覚める②

壁にはりつき息を殺しながら「どうしてこうなった」と誰にともなく何回も問いかける。 腕には保田がすがりついて、汗まみれの手から震えが伝わってやまない。 時は遡って一時間前。 脅かし役のメンバーがホモたちを怯えさせ泣かせてお漏らしまでさせて、その醜態をばっちり録画。 目的を果たし「編集してネットに流すのたのしみだぜえ!」と浮き浮きと帰ろうとしたとき代表が隠し扉を発見。 隠し扉の向こうには下りの階段があり、地下室につづいているのか。 真っ暗な階段の下のほうをスマホで照らし「精神病棟の地下ってやばくね?」「こっちのほうがガチじゃん」「結局、俺らは肝試し、やっていないしな」とはしゃいで降りていったのがまちがい。 メンバーとホモたち全員が地下に降りたところで扉が閉まり、どれだけ押しても蹴ってもタックルしてもびくともせず。 「まさか俺たちをハメたのか!?」とホモたちをしめあげていたら悲鳴が。 見やると、尻餅をつくメンバーの前に異形の者が。 頭はドーベルマン、体は人間。 フルチンの裸にして、尻から生えた尻尾をぶんぶん。 生生しすぎるドーベルマンの顏は被りものに見えず、犬人間といったところ。 それは目のまえのメンバーをすぐに襲うことなく、遠吠えをすると、地下室のあらゆるところから犬人間が押しよせてきた。 尻餅をつくメンバーに群がり「やあ、ああ、やめろお、ああああ!」と服を引き裂き、どうやら犯しているよう。 あまりに突拍子もなく急展開が起こり、凄惨な光景を前にして俺たちは呆然。 群れの一人の犬人間が弾きだされ、こちらに振りむいたとたん、やっと我にかえり、蜘蛛の子を散らすように逃げた。 肝試しをする前、病院を下見したものを、地下室はノーマーク。 どれだけの広さで、どういう構造なのか、さっぱり分からないまま、とにかく犬人間から距離をとろうと闇雲に走って、気がつけば、保田と二人に。 突き放そうとしても腕にしがみついたまま、梃子でも動かず。 「お前はホモだからいいだろ!」「あれはエッチじゃなく暴力であり犯罪だ!」とどれだけ小声でいい合ったか。 二人で喧々諤々していたら見つかってしまうから、そのうち諦めて、文句を垂れず保田を従えることに。 まあ、保田は耳がよく、犬人間接近の察知が早いから、すこしは役に立ったが。 そうして、はじめは、とにかく逃げ回っていたものを、途中から「鍵を見つける」という目的ありきで行動を。 地下への出入り口に鍵穴があるのを思いだしてのこと。 押しても引いても無駄だったとなれば、鍵が突破口になる可能性が。 「鍵があるとしたらスタッフの部屋とか受付だろう」と病室が並ぶエリアをぬけ、迷路のように入り組んだ廊下を歩いていき、それらしい部屋を捜索。 受けつけのカウンターのようなのを見つけ、入った奥のほうに鍵を発見。 が、手を伸ばす間もなく、保田が引っぱったので慌てて隣の部屋に。 棚のうしろに身を潜めて覗けば、カウンターのあたりを犬人間がうろうろ。 しばらく待つも、涎を垂らしながら行ったりきたりして、カウンターから離れず。 今は一人だが、増えるかもしれないし、包囲される危険もある。 「なるべく早く鍵をゲットして移動しないと・・・」と頭をひねらせ、ふと保田を見やると、顎をしゃくってみせた。 「お前が囮になって、あの犬人間を遠ざけろ」 「い、いやだよ・・・!そしたら、そのまま僕を見捨てるんだろ?」 「・・・お前、自分の立場を忘れているんじゃないか?」 「社会的に抹殺されてもいいんだ?」と鼻で笑うと、保田は口をつぐみつつ、反抗的な目つき。 舌打ちして、さらに揺さぶろうとするも「あれ?でも、どういう写真だったけ?」と思いだせない。 立ちバックで保田の腰をつかみ挿入していた相手は、たしか・・・。 つい考えこんでしまい「うしろ!」と保田が小さく叫んだのに瞼を跳ねる。 と同時に保田を引っぱり、生贄とばかり差しだそうとしたのだが、犬人間の腕はその体をすりぬけ、俺の肩をつかんだ。 一瞬で保田が煙のように霧散。 非現実的な事態を目の当たりにし「な・・・!」と声をあげる間もなく、俺を押し倒した犬人間が遠吠え。 すこしもせず数多の足音が迫り、片手で首を絞められる俺に犬人間たちがなだれこむように。
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