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再び非常階段へ戻り、上へ向かって歩みを進める。
しかし予想外の光景があった。屋上へ通じる扉には鍵がかけられ、ドアノブに鎖まで巻かれていたのである。他に屋上へ通じる階段があるのだろうか。
「そんな、どうしよう……」
行き場を失ったような気分のFさん。こうなると階ごとにIさんを探すしかない。
まず7階。エレベーターの前まで行き、そこから各部屋の前を静かに通る。なかなか広いマンションであり、階を全て巡るだけでも時間がかかってしまう。
目に付いた部屋のドアに手をかけるも、どこも鍵がかかっている。そして、屋上へ行くには非常階段から上がっていくしかないことがわかった。
「みんな出ていったのに、いちいち鍵をかけとくものなの……?」
6階、5階と降りていくものの、Iさんの姿はやはりない。
道中で物音がしたらそれがIさんではないかと考えていたが、あいにく外の風の音しかしない。
「さっきいなくなったのは4階だったよね、確か……」
再び先ほどまでいた4階へ降り立とうとする。
「えっ?」
階下の3階にて意外なものが目に入った。Iさんらしき背丈と服装の人物が、3階のある部屋にまさに入ろうとしているところだった。
「え、あれ、Iだよね……」
Fさんは声を書けるか一瞬迷い、その間にIさんらしき人影は振り向くこともなく部屋に入っていった。
「どうしよう、あの部屋に入ってっちゃった」
自分もとにかく3階へ降りようと踏み出したFさん。そこへ、突然スマホの着信音が鳴り出した。
誰からかと画面を見ると、Iさんだった。
「I? ねえ、どうしたのよ」
電話に出て、すぐに疑問を投げかけるFさん。しかしそれへの答えはなく、相手が話し始めた。
「あのさ、今、屋上にいるんだけど、Fも来られる? 変わったものがあるんだよ」
電話から聞こえるのはIさんの声である。背筋がゾクッとした。
「え、でも、さっき……」
「待ってるからさ、屋上まで来てくれよ」
Fさんは得体の知れない恐怖を感じる。
屋上の扉はさっき開かないのを確認した。そしてIさんらしき人物が3階の部屋に入っていくのを見た。では、電話口のこの人物は何を言っているのだろうか?
迷った末にFさんはこう返した。
「ねえ、あなた、いったい誰?」
「……」
プツッ。
ツー、ツー、ツー。
電話が切られた。
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