6.突然の来訪

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「自業自得でしょ」 私はひんやりと冷え切った声でそう言うと、じろりと宍戸を睨んだ。 宍戸はそんな私を見て苦笑を浮かべ、これ見よがしに大きなため息をついた。 「俺は岡野の恋愛対象から外れてるかもって、そんな気はしてたけどさ。改めてはっきり言われるのは、やっぱりへこむな」 「それは……」 「なぁ」 宍戸は体を起こして私に問いかけた。 「どうしたら、俺のこと、意識してくれるんだ?」 私に向けるその眼差しは、よく知っているはずの宍戸ものではなかった。私の怒りが薄れてしまいそうになるほど真剣だった。彼の視線を受け止めていられなくなり、私は逃げるように宍戸からふいっと顔を背けた。 「そんなこと言われても困る。今夜のことはなかったことにするから、もう帰って」 せめて事故だったことにして、いつか笑い飛ばせるようになったらいい、宍戸と今まで通りの関係に戻れたらいい、と思った。それは自分勝手だと分かっている。だからその本心を口にはしない。 「さっきはつい謝ってしまったけど、俺はなかったことにはしたくない。岡野との関係だって、できることなら変えたい」 顔を見なくても、宍戸の声や口調から真剣な気持ちが伝わってくる。 私はうつむいた。 「……でも、私はそれに応えられない」 すると宍戸が不意に口調を変えた。 「それなら、これ、やるよ」 そう言って私の目の前に何かを差し出した。 「……映画のチケット?もしかして、この前言ってた?」 「あぁ。それ、やるよ。あの人のこと、誘ってみれば?」 「え……」 唐突すぎる宍戸の提案に、私は困惑した。 「いきなり何?」 宍戸の意図がよく分からない。 眉を顰める私に宍戸は言った。 「いいから受け取れ」 なかなか手を出さない私に、彼は押し付けるようにチケットを握らせる。 「え、だって……」 宍戸は器用に唇の端だけを上げてにやりと笑った。 「それ使ってさっさと決着つけろよ、補佐との関係をさ。ほんとのこと言うと、岡野が補佐にフられるのを待ってたんだよ。で、お前が弱ってるところにつけこむつもりでいたんだ。それなのに、岡野がなかなか行動に移さないでいつまでもだらだらしてるから……。うっかりフライングしてしまったじゃないか」
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