1.初対面の日

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「じゃあ、そこまで一緒に行かないか。俺もタクシー拾うつもりなんだ」 「三次会には参加されないんですか?」 補佐は苦笑を浮かべた。 「今夜はもう勘弁だよ。いつも以上に飲まされた。うちの連中は、飲み会っていうと容赦ないからね。――さ、行こうか」 「はい……」 補佐の少し後ろを歩きながら、私はそっと彼の様子を伺った。 いつも以上に飲まされたと言っていたわりに、その横顔は凛として、足取りにも乱れた様子はない。 補佐に付き従うように黙々と歩いていると、彼はわずかに振り向き私に訊ねた。 「岡野さんと宍戸は同期入社なんだね」 「はい」 「二人って、ほんと、仲がいいんだね」 「仲がいいと言いますか、あれは…」 たぶん、一次会の時の様子を見て言っているのだろうと思った。私は小さくため息をついた。 「私が一方的にからかわれていただけなんです」 彼はくすっと笑った。 「そういうのを、仲がいいっていうんじゃないの?じゃれ合ってるようにしか見えなかった。俺、同期っていうのがいないから、羨ましいよ」 「えっ!」 私は思わず大声を上げてしまう。 「羨ましいだなんて、どうしたらそうなるんですか?補佐、本当はかなり酔っていらっしゃいますよね?」 「あはは。分かる?」 補佐は機嫌良さそうに笑った。 意外な顔を見たと思った。最初に感じた厳しい取っつきにくさのようなものがないことに、私は驚いていた。 こっちの方が絶対好きかも――。 そんな感想が頭の中に唐突に浮かんだ。途端に私はうろたえ、それから自分に言い聞かせる。 単なる人としてという意味であって、特別な意味は何もないんだから――。 たどり着いたタクシー乗り場に待機していたのは1台だけだった。 どうやら利用者がピークの時間帯だったらしい。タクシーを待つ人は他にはいなかったが、これを逃したら次はいつ乗れるか分からない。 どうしようかと考えたが、ここはやっぱり補佐に譲るべきだと思った。 しかし、先手を打つように彼は言う。 「岡野さんが先に乗って」 「そういうわけには……。補佐がお先にお乗りください」
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