5 デザート

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5 デザート

 あっという間にデザートの皿が空になり、二人は話に集中する。 「で、五人目は?」  流れがわかってきたからか、今度は日菜乃から聞いてみた。すると優奈はアイスティーを飲みながら頷く。 「これね、先週の話。とにかく年下と同い年は合わない気がしたから、年上の人と会おうって決めたんだ。その人は三つ年上のガス会社の人で、なんていうか全体に普通な感じだったの。デートも普通に会話が弾んだし、それに私だって普通の一般人だし、『あぁ、きっとこういう人なら安心して結婚出来るのかなぁ』って思ってさ、この夏最後の婚活で、やっと彼氏ゲットかも〜って思ってたんだけど」 「何かあったの?」  含みのある言い方に、日菜乃は思わず自分から聞きに行ってしまった。 「たまたま朝の情報番組を見てたら、なんとその人が出て来て」 「えっ、なんで?」 「『メンズエステ特集。あなたがメンズエステに来るのは何故か、メンズエステは必要か』」 「わお……インタビューされてたんだ。なんて答えてたの?」 「『男だって自分を磨きたくなりますよ。そんな自分に自信を持って、女性にも褒められたいですね』」  二人の間に暫しの沈黙が流れる。 「ま、まぁ……今の時代、当たり前のように男性も行くからね」 「私だって別に否定はしない。そういう人がいいって人もいるだろうし。ただ私は……なんか違うんだ。私はエステより違うことにお金をかけたいというかーー」 「まぁただ合わなかったっていうだけじゃない? 価値観が違う、趣味が違う、性格が合わない。全部がピッタリ合う人なんか稀だけど、我慢出来ない人と付き合ったって、きっと長続きしないよ。だからそんな悩むことないって」  何かを悟ったかのように語る日菜乃の言葉に対し、優奈は『その通り』とでも言わんばかりの様子で親指を立てる。 「日菜乃ってば、めちゃくちゃ頼もしいじゃない……まぁそうよね。無理して彼氏作る必要なんてないからね。とりあえず夏までと決めての婚活は終了。しばらく自分の趣味にでも没頭することにする」  女子のお喋りは、話しても話しても尽きることはない。二人はお腹も心も満たされて、ほうっと息を吐いた。
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