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1 サラダ
あの日から四カ月が過ぎ、日菜乃は再びあのカフェに呼び出されていた。
来るまではいい報告があるのかと思っていたが、いざ向かい合って座ってみるとどちらとも取れない表情の優奈がおり、日菜乃は眉間に皺を寄せて首を傾げた。
注文を伝えて店員がいなくなると、どこか気まずい空気が流れる。それを打ち破ろうと、日菜乃は意を決して口を開いた。
「こうやって二人で会うの、久しぶりだねぇ」
すると優奈はテーブルに置かれたグラスの水を一気に飲み干し、勢いよくテーブルに置いた。
「日菜乃、今は何月?」
「は、八月かな?」
「そう……私が宣言した夏がもう終わるわけ」「う、うん。何かあった?」
「あったどころじゃないわよ……とにかく私の話を聞いて」
「う、うん。わかった」
日菜乃は真剣な顔で頷いたが、ランチセットのサラダが届いたため、日菜乃はサラダを食べながら話を聞くことにした。
「まず一人目。七歳年上の郵便局員だった。顔写真は微妙だったけど、『ゲームとか謎解きが好き』って書いてあったから、気が合うかと思ったわけ」
「なるほど。同じ趣味だったんだ。で、どこに行ったの?」
「体験型の結構本格的な謎解き。最初は和気あいあいと楽しくやってたの。それなのにあの男ーー舌打ちしやがったの」
優奈の眼光が鋭くなるが、言葉の意味がわからなかった日菜乃は目を点にして首を傾げた。
「……舌打ち?」
「そう。部屋の中の謎を解いて、見つけた番号をドアに入力しないと出られなかったんだけど、それが全然見つからなくて失敗」
「それで舌打ち?」
「そう。最悪じゃない? 一応謝ったけど、別に謎が解けなかったのは私のせいだけじゃないでしょ? あまりにも腹がたったから『これから用事があるので帰ります〜』って言って即帰ってやった」
「まぁそんな奴とずっとなんていられないよねぇ」
話しながらなのに、あっという間にサラダを完食。するとすぐにスープが運ばれて来た。今日はミネストローネらしい。酸味のある香りが食欲をそそる。
「じゃあ二人目ね」
「えっ、一人目もう終わり?」
「当たり前じゃない。そんな男と我慢してまで付き合えないって」
思った以上にドライな優奈の様子に、日菜は驚いたように目を瞬かせた。
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