一日中の魔法

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
             それが私の現実  今の私と夢で見ていた私の風姿は全く違う。そろそろ吹いている風、草の匂いと歩いて行った私の疲れた足音。その時、私は何も考えずに、だんだん沈んでいく太陽の姿に似せたような心を持って、郷愁の気持ちのあることを感じた。初めてだった。何か静かな通り道。 夕暮れも今朝と全く違った。今、手に雨の冷たい点滴をとって、大切な信託と同じ部屋につれて戻ってゆく。今朝、手は埃で覆われていたばかり。体が痛くて、痛くてたまらなくなった私の手がそらと同様、真っ白で計り知れないほど深遠の寂しさを底に告げていた。 それでも、足が止められない。「なぜ、その溺れるような姿を見せるのか。」とは、はたはたして揺蕩ったトンボが聞いている様子だった。わかりたかったけれどもわからなかった。それで声も掛けない。 今、夕暮れの光に照らされているけれども分からない。答えは大切なものだから、真実を探したいとも思い浮かぶ。それも確かに、何度も何度も起こった涜神ではないだろうか。そうだと自分の中で信じる。「確かにそうだ」と揺れている淡紫色の藤の花も聞かせる。 足音がカラスの声と同じく鳴く。それが事実だろう。それも、夢に出てきた恐るべき鳴き声であった。今の私は、そんな短い時間にそれを確かだと思って信じる。信じるものは、不信感に至る私の姿が夕暮れの赤い光を疲れた体感になかなか染まっていったことから約する。足音も暗くなったそらのしたでどこかに沈んでしまい、独りぼっち立つ。 冷めやらぬさざめき。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!