行くべきか、行かざるべきか考えよう

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 嘘つき呼ばわりされたパエトンは悔し涙を流しながら家に帰るのであった。 悔し涙を目に浮かべたパエトンはクリュメネに一部始終を話し、父が太陽神ヘリオスである証拠を求めると、クリュメネは首を横に振った。 「信じなさい。あなたは確かに偉大なる太陽神ヘリオスの息子なのですよ?」 「なら、どうしてここに来ないの?」 「いいですか? 太陽神ヘリオスの役目はこの地上を太陽の光で照らすこと。太陽は常に空になければならないもの。一日足りとも休むことは許されないのです」 つまり、多忙すぎて会えないということである。このままでは自分が太陽神ヘリオスの子であることが証明出来ない。  それから毎日、パエトンは天を見上げては同じ軌道を描く日輪に声をかけた。 「パパ! 俺は太陽神ヘリオスの子なのに、友人達からは信じてもらえません! 悔しいです! 俺を哀れに思うなら、一度この地に降臨(おお)り下さいませ!」 しかし、太陽神ヘリオスは素通りをし日輪の尾を空に残すのみ。 太陽神の役目は常に地上を太陽の馬車で照らすこと、同じ軌道で太陽の馬車を動かさなければならない。パエトンの呼びかけに応え、太陽の馬車の軌道を乱すことは決して許されないのである。  パエトンはエパポスや友人達に太陽神ヘリオスの役目を説明し、理解を得ようとした。 百聞は一見に如かず、どれだけ百聞を重ねても一見には敵わないもの。 益々嘘つき呼ばわりをされ、挙句の果てには「お前の母親は嘘つきだ!」「嘘つきの母親からは嘘つきの子供が生まれるんだ!」と、クリュメネまでも侮辱されてしまったのだった。 これ以上、エパポスや友人達にバカにされたくない。このまま嘘つき呼ばわりをされるのは神の子としての沽券に関わるし、何より愛する母を侮辱されたままで終わりたくない。  パエトンは思いつきで一大決心をするのであった。 「そうだ、パパのところへ行こう」 パエトンはクリュメネより「太陽神ヘリオスの神殿は太陽が昇る東の東の地の果てにある」と聞いていた。その言葉のみを頼りに東へ東へと旅に出たのである。 Sunrise…… Sunset…… Sunrise…… Sunset…… パエトンは飲まず食わずの不眠不休で太陽に向かって走り続けた。  人の子であれば、死が訪れる程の苦難の道程。しかし、パエトンは疲れこそするものの死が訪れることはなかった。なぜなら、パエトンは神の子で人の子とは一線を画す程に頑強な体だったからである。 この頑強な体こそが神の子である証拠なのだが、パエトンは幼き少年故にそこまで頭が回ることはなかった。
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