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パエトンは手綱を緩め、地上に降りようとした。すると、四頭の馬達は手綱を引かれたり緩められたりとコロコロと変わる指示を前にパニックを起こしてしまった!
四頭の馬達は太陽の軌道から外れ、全力で蒼穹を暴走ていく……
豆粒程の大きさに見えるぐらいに天高く太陽の馬車が昇ると、地上は冷え切りたちまち凍りついてしまう。勿論、海も川も池も凍りついた。花も草も木も枯れ、凍える雪が降り注いだ。人々もかつてゼウスが火を奪いし時のように寒さに震えるようになった。凍りついた枯れ木のようになり、亡くなる者もいた。
地上は瞬く間に極寒地獄へと姿を変えた。
パエトンはこれはまずいと手綱を押して高度を下げようとするが、四頭の馬はパニック状態。手綱の指示に従わずに一気に急降下! 今度は地上の各地の地表スレスレを走るようになってしまった。
凍りついた海も川も池は、一気に溶けて元の水に戻るも、蒸発し天へと帰すのみ。花も草も木も燃え、燃え盛る日輪の炎が降り注ぎ不毛の地へと変えていく。場所によっては砂漠へと変わってしまう。人々も日輪の炎に焼かれていく、焼かれて燃え尽きた薪のように亡くなる者もいた。
地上は瞬く間に灼熱地獄へと姿を変えた。
太陽の馬車は暴走し、縦横無尽に天空を暴走て行く…… 昼と夜が目紛るしく変わる様は終末そのもの。生き残った人々は天高く聳えるオリュンポス山に向かって悲嘆悲痛の声を上げるのであった。
その声を聞くは大神ゼウス。オリュンポスの頂きにあるゼウス神殿より地上を見下ろせば、あるのは死屍累々と屍を重ねる人々達の姿、それを嘆き悲しむ人々達。燃える大地、枯れた海や川や湖……
地上は、死にかけていた。
大神ゼウスは全ての神々を召集し、緊急会議を開いた。集まった神々は今回の騒動で被害を受けたのか満身創痍で駆けつけたものばかり。中でも地上そのものである大地慈母神ガイアは半死半生の状態。一刻も速い事態の収拾を大神ゼウスに願うのであった。
「ゼウス、我が孫よ! 何故に私がこのような目に…… 体中を冷やされたり、焼かれたり痛くて堪らん! 我が子である人も無慈悲に凍えたり焼かれたりで死んでおる! 私とて体が熱く、喉もカラカラなのだ! どうにかせい!」
大神ゼウスは地上を見下ろし、暴走を続ける太陽の馬車を眺めた。
そして、オリュンポス山に集まっていた神々の中から太陽神ヘリオスを呼び出し、事の次第を尋ねた。
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