2人が本棚に入れています
本棚に追加
行くべきか、行かざるべきか考えよう
二人の肩出服を纏った少年が、徒競走で競い合っていた。
少年は其々、金髪と黒髪の眉目秀麗の顔立ちをした神の子。
金髪の少年の名はエパポス、大神ゼウスの子である。
黒髪の少年の名はパエトン、太陽神ヘリオスの子である。
徒競走の結果はパエトンの勝利、エパポスはそれに腹を立て毒吐いた。
「君は足が速いね、パエトン。でも、ボクの方が凄いぞ? ボクの父は大神ゼウスなんだ。全知全能の神様なんだぞ!」
父親が凄くても、本人が凄くなければ意味がないじゃないか。俺に競争で負けた悔しさから父親を自慢することで優位に立ちにくるとはとんだ小物じゃないか。パエトンはそう思いつつも、子供故にムキになり同じく父親自慢をしてしまう。
「俺のパパは太陽神ヘリオスだ。この地上を太陽の馬車で照らす神様なんだぞ! 朝も昼も夜があるのはパパがいるからこそなんだぞ! 凄いだろ!」
エパポスとパエトンは父親自慢で競い合った。
エパポスは時折大神ゼウスに会っているために紛れもない真実を実体験として話すことが出来る。
しかし、パエトンは母クリュメネから聞く太陽神ヘリオスの話をすることしか出来ない。真実かどうかはわからない曖昧なものでしかなかった。
すると、友人達が二人の間に入ってきた。この友人達は神の子ではなく、人の子である。
エパポスは大神ゼウスの子だと周知されており、一目置かれている。なぜなら、大神ゼウスがこの地にエパポスを連れ、巫女達に「この子は私の子だ、大人になったら母イオ(現エジプト女王)の元に返すから一所懸命に育てよ」と勅命を出していることを知っているからである。
しかし、パエトンは母親のクリュメネがこの地で一人で産んだ子。太陽神ヘリオスの子である証拠はどこにもなかった。パエトンも母クリュメネの言う「あなたは太陽神ヘリオスの子よ」と言う言葉を信じているだけである。
エパポスは太陽を指差しながら、友人達に煽るように言った。
「おい、聞いてくれよ! パエトンはあそこにいる太陽神ヘリオスの息子らしいぞ?」
その友人達はパエトンのことを自分と同じ人の子であると思っていた。それがいきなり神の子だったと言われても信じられないこと。疑いをかけてしまう。
「ウソだろ?」
「確かに頭もいいし、運動も出来るけど、ウソはダメだよ?」
「エパポスがゼウス様の子供だからってチヤホヤされるのを羨ましいと思ったんだろ!」
「嘘つきは泥棒の始まりだぞ!」
「近頃、神を騙る不届き者が多いって聞いてるぞ! お前もか!」
「証拠を見せてみろよ! でないと、お前は嘘つきだぞ!」
最初のコメントを投稿しよう!