第3章 推しが用意した落とし穴にまんまとハマってしまいました

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※※※ 「えっと……オムライスでいいかな……」 私は仕事を終え、駅からアパートまでの道を真夏と食べる夜ご飯のメニューを考えながら、足早に歩く。もう少し早くに帰ろうと思ったが、口紅企画のこともあり、結局残業をしていつもと同じ時間だ。 あのあと万里花は皆に挨拶をしてからすぐに得意先への挨拶まわりに出かけてしまい、会話はできなかった。 (すごく綺麗で……凛としてて……ひとつ年上とは思えないなかったな……) なんだかモヤモヤした気持ちになるのは、真夏の元交際相手だからなのだろう。 (あんな人と付き合ってた真夏が……本当に私のこと……) 私は歩きながら、アスファルトに転がっている小さな小石をコツンと蹴った。 すこし歪で何の変哲のない小石は何だか私に似てる。どこにでもいるような平凡な私の何に真夏は惹かれたんだろうか。 その言葉を全部信じてもいいのだろうか。 すぐに分からなくなってくる。 自分に自信がなくて……。 「はぁぁ……」 (誰もが振り返る……お姫様みたいな姿だったら良かったのに……) 大きくついたため息は夜空に輝くカシオペア座に向かって吸い込まれていく。 (あと真夏は……知ってるんだろうか……あのRIKAがうちの会社の海外マーケティング部長に就任したこと……) 朝、家を出るときは早く仕事を終わらせて真夏と一緒にご飯を食べるのを楽しみにしていたのに、何だかいま真夏に会えば万里花の顔が過ってしまいそうだ。 悶々とした気持ちのまま、私はアパートへの最後の角を曲がる。 (あれ……あの車) ふと見れば、私の住むボロアパートのすぐ目の前に白の高級車が停まっている。
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