Extra edition⑴

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Extra edition⑴

「ただいま」 「おかえりなさい、万里さん」  ついひと月前から新店舗のオーナーとして正式に働き始めた俺は、へとへとになりながら環奈の待つ我が家へ帰宅する。 「お疲れ様です」 「ああ、ありがと。つーか、動いて平気なのか? 今朝、腰が痛いって言ってたろ?」 「はい、ゆっくりしていたら良くなりました。お風呂、沸かしてありますからどうぞ。その間にご飯、温めますね」 「そんなの俺がやるからいいって。環奈は座ってろ」 「駄目ですよ、これは私の仕事ですし、別に病気じゃないんですから……」 「いや、けどもしもの事があったら大変だろ? 俺が家に居る間は俺が出来る事は俺がやる! いいな?」 「分かりました。それじゃあ、お言葉に甘えて座ってますね」  俺の言葉に、クスリと笑った環奈はリビングに戻ると、ソファーに腰掛けた。  俺と環奈は約四ヶ月前の環奈の誕生日に無事入籍した。  その前から既に一緒に住んでいたし、そもそも夫婦みたいな感覚だったから今更感もあったけど、『笹垣 環奈』から『葉瀬 環奈』になったのを環奈が様々な書類に記載しているのを見る度、俺は密かに喜び、幸せな気持ちに浸っていたりする。  風呂から上がり、環奈が作ってくれていた晩飯を温め直した俺がダイニングテーブルに着くと、ソファーに座っていた環奈がこちらへやって来て向かいの席に腰掛けた。 「どうした?」 「いえ、その、早く万理さんと色々な事をお話したいと思ったから……。駄目、ですか?」  俺が問い掛けると、少し恥ずかしそうに俯きながらそんな事を言うもんだから、俺の口元が緩む。  本当、可愛いよな、環奈は。  付き合いたてでもなければ一緒に暮らしてから結構経つのに、未だ環奈の言動は初々しいものばかりで、その度俺の心は彼女に奪われっ放し。  そんな環奈は現在、妊娠七ヶ月。  しかも双子を妊娠中な事もあって、俺は毎日気が気じゃない。  心配なあまり、自宅マンションは職場から徒歩五分の場所にある物件を選び、仕事中も定期的に様子を見に戻っていたりする。  周りからは、生まれる前からそれじゃあ、生まれてからは大変だ、なんて呆れられてるけど、特に気にしてない。  心配なものは心配なんだから、仕方ない。  まあだからと言って仕事を投げ出してる訳じゃねぇし、オーナーとして最低限、やる事はやっている。  俺が務めている店は【DREAM】というホストクラブ。  正直、個性的なキャストが揃っていると思う。  俺自身ホストだった経験を活かして、相手に誠心誠意向き合うよう、常に言い聞かせている。 「そう言えば、そろそろ名前、決めないとですよね」 「そうだなぁ、候補があり過ぎてなかなかなぁ……」 「万里さんがご飯を食べ終えたら、ゆっくり考えましょうね」 「ああ」  妊娠したと聞いた時も驚き、嬉しい気持ちは溢れていたけど、それが双子だと知った時の喜びは比べ物にならなかった。  しかも、男女の双子だという。  毎日名前について話し合っているものの、候補ばかりが増えすぎて一向に決まる気配がない。  それに、なんて言うか、俺がこういう事に頭を悩ませる日が来るなんて、何だかおかしくて、笑っちまう。  飯を食い終え、食器を片付けた俺は、食後のコーヒーは自分が淹れたいと言って聞かない環奈に後を任せ、ソファーに座って食休みをする。 「万里さん、どうぞ」 「ああ、サンキュー」  俺にマグカップを手渡した環奈は、満足そうな表情を浮かべながら俺の隣に座って身体を寄せて来た。 「ん?」 「えへへ、万里さんに、くっつきたくて……」 「まーた、そういう可愛い事言うなよ。我慢、出来なくなるだろ?」 「……ごめんなさい、でも……私、」 「分かってる、嬉しいよ、そう言ってくれて。ほら、名前、決めようぜ?」 「はい!」  環奈の肩を抱き寄せながら、名前の候補を纏めたノートを片手に、どれにするか話し合う事にした。
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