Extra edition⑵

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Extra edition⑵

「うわぁーん! かいりがいじわるしたぁー!!」  日曜日の朝、リビングの方から泣き声と共に聞こえてくるのは四歳になる娘の星奈の声。 「…………九時……」  棚に置いてある置時計に視線を向けると、時刻は午前九時。昨夜店でトラブルがあった事で帰宅したのは朝方四時を過ぎた頃で、寝たのは五時過ぎだった。  今日は休みなので昼過ぎまでは寝たいと思っていたが、どうやらそれは無理そうだ。 「うるせぇーな! せいながわるいんだろ?」 「せいな、わるくないもん!」 「うるせーって!」  更には同じく四歳になる息子の海里の声も聞こえてくると、言い合いはヒートアップする。 (……環奈は、居ねぇのか?)  いつもなら二人が喧嘩をしていたらすぐに止めに入る環奈の声が聞こえて来ない事を不思議に思った俺は身体を起こすと、頭を掻きながらベッドを降りて寝室を出た。 「こーら、二人とも、何朝から喧嘩してんだ?」  少し不機嫌気味にリビングへ顔を出すも、 「パパー! かいりがいじわるしたの!」  俺の表情など全く気にしていない星奈が真っ先に駆け寄り俺の足元にしがみつくと、海里が意地悪をしたと訴えてくる。  一方の海里は、俺の不機嫌さを察したのか、バツの悪そうな表情を浮かべながら、「お、おれ、わるくないし!」と言って顔を背けた。  海里の足元に星奈が大切にしてる人形が落ちてる事から、恐らく海里がその人形を取り上げたか何かしたんだろうと推測した。 「海里、星奈の人形に悪戯したのか?」 「…………ちがうし、ちょっとかりただけだし」 「むりやりとったの!」 「ちげーし!」 「分かった分かった。海里も、貸して欲しいならきちんと頼め。な? 星奈も、貸してってお願いされたら貸してあげられるよな?」 「……うん」 「ほら、星奈はお願いすれば貸してくれるって言ってるぞ? 海里は?」 「……これ、かして」 「……いいよ」  何とか喧嘩の種を詰む事が出来た俺は安堵すると、次は環奈の行方を訊ねてみる。 「……ところで、ママはどうした?」 「ママならおそとでおはなししてるよ」 「外?」  星奈が玄関を指差しながらそう口にしたので、気になった俺は星奈と海里に仲良く遊ぶよう言い聞かせて玄関へと向かい、ドアを開けた。 「あ、万里さん。もう起きたんですか? 寝たの遅かったんですからもう少し寝ていていいのに」 「いや、海里と星奈が喧嘩してて目が覚めちまったんだよ」 「そうだったんですか? それはすみません」 「いや、別に環奈のせいじゃねぇだろ。つーか誰が来てんだ――?」  環奈が誰と話をしているのか気になった俺が相手を尋ねた、次の瞬間、 「おう、相変わらずパパやってんだな?」 「――って、明石さん!」 「久しぶりだな、万里」  明石さんがククっと笑いながら顔を出した。
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