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「僕はいる」
失った右腕のあった場所を指差す魔導士が「くっつけてよ」と平気な顔で云うのを聞いたジルヴェスターは、こちらも厭そうな顔ではあったが、「それなら、ちょっと貸してみろ」と、右腕は賢者の許へ渡り、観察されはじめる。
「ああ、なるほどな。魔王の指環に自分の魔力を流して、状態を維持しているのか。どううりで消えないわけだ」
「そういうこと。僕の魔力が所有権を有したから、この右腕は指環ごと、もう僕のモノなんだ――あっ、忘れてた」
ふたたび慌て気味に魔王の亡骸に寄っていったイザークだが、残念そうに戻ってくる。
「もう、爪先しか残ってなかった。ああ、左手にあった指環も欲しかったんだけどな。たぶん、あれに魔力を溜め込んで、何度も再生していたんだ」
「それは、もったいないことをしたな。でもまあ、こっちの方がいいだろう。この指環は魔力を増幅させるのだろう。より少ない魔力で強力な魔法を放てる」
観察を終えた賢者は、今度はアレクシスへと右腕の切断面を向けた。
「アレク、炎剣で断面を綺麗に削ぎ落して、念のため、神炎で消毒しておけ」
たらい回しにされた右腕を受取り、一番顔をしかめたのは勇者だ。
「うええ、本当に気持ちワリイな。血管みたいのがウネウネしているぞ」
「もう、さっさと焼いちゃってよ」
ユリアスが拾ってきた平らな石をまな板代わりに、アレクは右腕の断面を炎剣で綺麗な切り口にしたあとユリアスに持たせ、ジュウジュウと神炎で燃焼消毒した。
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