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「だって、助けてくれなかったから……」
「その人が、あの場であんたを助けられる状況にあった? 助けてくれないからと言ってはっきりと罪を犯したわけではないでしょう?」
ガリースが黙りこくる。
「罪のない人まで殺したら、ラリアと一緒だからね! 顔だけじゃなくてやることも似てきてしまったの? やっぱり血が繋がっている姪だから似てきた? あんたはそれでいいの?」
ガリースは、自分の望みのために罪のない人を傷つけることを厭わなくなった私とよく似てきた。成長するにつれより一層私と似てきている。
「いやだ! 罪のない人を平気で殺す人なんかと一緒だなんて! しかも聞いてくださいよ師匠! 自分の家族は殺したくせに、自分には六歳の息子がいるなんて。六歳ってことは反逆した後ですよね。きっと人の心なんてないんですよ!」
言い返す言葉が見つからない。
「私、やっぱりラリアが許せない。復讐する」
復讐する。久しぶりに聞いた。
「……それでいいの」
あんたは罪のない人に攻撃魔法を使うようなやつにはならないの。人を守るために戦いなさい。傷つけるために力を使うな。私とは違うんだから。
「これからは修行ももっともっと頑張っていつか絶対にラリアを倒すので、だから師匠、戻ってきて……」
「まあ、いいでしょう」
どうせ断ってもせがまれ続けるだけだ。
それに復讐したい気持ちが戻ってきているのが目でわかる。人を突き刺してくるような眼差しが私でも正直身の毛がよだった。
「本当ですか?」
「その代わり、しばらくは家で休んでなさい。その腕ではまだ剣も魔法練習も認められません。あと、外に出てはだめ。買い物も私が行くから家で待ってなさい。私を待つ間に勉強に励むこと」
ガリースが今言ったことをノートに記していく。
「わかりました」
「あと、紫の髪に黄色の目で変装するのは今後一切やめなさい。北の村に行く時だけじゃなくて他のところに行く時も、禁止」
もう危険すぎる。しばらくガリースをどこにも出したくないくらいだ。
「やっぱり、もうあの姿はダメですか?」
「その変装をしているだけで、自分からガリースですと言っているようなもの」
「……師匠は?」
私の髪の色と目は元々この色であるという認識になっている。ガリースの前では変えられない。少し考えなければならない。
「人の心配より自分の心配をしなさい。だからあれほど姿を明かすなって言ったのに」
「……ごめんなさい」
「次からは絶対しないことね」
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