すべての始まり

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「え? お母さん、どこいくの?」  妹には命令口調なくせに幼い娘には猫撫で声で答える。 「お爺様のところよ、大事なお話があるの」  私を除いてお父様とお姉ちゃんが話すと言うことは、何か私に訊かれたくないことでもあるらしい。もちろんガリースはどんな話がされるかはわからないようだが、大人の話を無理に聞きたがろうとする子でもなかった。 「そっか……わかった。ねえ叔母さん、遊ぼうよ!」  また紫の水晶玉のような目が私に向く。服を引っ張られた。 「本当にガリースは叔母さんっ子ね」  まあ嫌われてるよりいいけど。 「お父様からも何か言ってやってください!」  やっぱりそうだ。お父様の執務室でお姉ちゃんが声を荒げている。 「しかし憶測だけで判断するのは……しかも妹だろう。リリアももう少し信用してあげなさい」 「お父様、私は何回もラリアが変なことをやっているのを見ているのです。この城に何か仕掛けているのはもちろん、北や西に遠征しに行った時にも何か怪しい動きをしているとの噂が。この国……『クレイシナピア』に関わることであるのなら、私も放っておけませんわ! 魔法が使えてコントロールできるのは私たち統治者であるアリストルアの血族だけです。魔力のない民に何かあったら守るのは私たちであり、それが使命なのですよ?」  扉の開いた隙間から覗くと、お父様はお姉ちゃんの言葉に頭を抱えているようだった。 「何かあってから魔法で守るのは当然のこと。それでは遅いのです。未然に防ぐべきです」  勘のいい姉は本当に嫌いだ。右手がむずむずする。手のひらを指で擦る。今すぐに姉に攻撃魔法をかけたいところだ。それとも口封じか、体の動きを止めるか。 「ラリアは我がアリストルア家の中でも一番脅威になりうることは、お父様もお分かりのはずです。一番強くなってしまったといっても過言ではありません」 「お姉ちゃん? 私の名前呼んだ? どうしたの?」  開いていた扉を開け、お父様とお姉ちゃんの前に現れた。途端に二人の顔色は真っ青に変わった。お姉ちゃんから体封じの魔法を使ってきたのがわかったので、魔法がかかる前に回避する。きっと私が魔法を使うとでも思ったのだろう。でも、それは、また……後で。 「ガリースはどうしたの? 一緒のはずでしょ?」  「お父様とお姉ちゃんが何を話しているのか気になって」 「だからって」  お姉ちゃんが言葉を続けようとしたが、それをかき消すように言った。 「私のことが気に入らないって? 変なことしてるし、命令に従わないって?」  二人は否定しない。それを話していたんだから。次に出す言葉を迷っている。 「大丈夫。もうみんなのほうが消えるから」
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