06:輝きに満ちた未来

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「『えええ!? 何でこっちに来るの!?』」 「『うるさいっ、仮にも夫なら妻の役に立て!! 私が逃げる時間を稼げっ!!』」  イノーラは情けない悲鳴を上げるクロード王子の背後に回り込み、ココに向かって思いっきり突き飛ばした。 「『ぎゃんっ!?』」  潰れた蛙のように倒れる夫をしり目に、イノーラは細道の先へ消えた。  即座にイノーラを追いかけてエミリオさんが駆けていく。  ブラッドさんは地面に伏して痙攣しているクロード王子を氷点下の目で眺めるばかりで、助け起こそうとはしなかった。 「………………」  路地裏を乾いた風が一つ吹き抜ける。 「……話には聞いてたけど、イノーラって本当に……うん。君の実の妹を悪く言うのは良くないよね。止めよう」  イノーラが消えた細道を見つめながら、ノエル様は私を気遣って続く言葉を飲み込んでくれた。 「すみません……」 「いや、セラが謝ることじゃないから」  少しして、エミリオさんは丸太でも担ぐようにイノーラを肩に担いで戻ってきた。  イノーラが暴れたので気絶させたのだろう。無理もない処置である。
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