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手のひらに収まる大きさの紙片に描かれていた魔法陣は一気に膨れ上がり、自動的に複雑な図形や文字が書き込まれていく。
凄まじい速度で展開されていく馬鹿げた大きさの魔法陣。畏怖の念を抱かずにいられない。リュオンの言葉は大袈裟でも何でもなかった。
本当に、彼女は次元が違う。私も一応魔女の端くれだからこそ、彼女の異常性がよくわかる。
こんなこと、『大魔導師』の称号を持つリュオンにだって出来ない。
これはもはや、魔女というより神の領域だ――
「――何があっても手を離すな。セラがドロシーに捕まったら終わりだ。世界の全てがドロシーのものになる」
リュオンが私の右手を掴んで囁いた。
魔法陣を睨む彼の顔つきは険しい。まるでいまから死地へ赴く兵士のよう。
左の腰に二本の剣を下げたノエル様もユリウス様も緊張した様子で光り輝く魔法陣を見ている。
「ええ。離さないわ。決して」
私はリュオンの指と指との間に自分のそれを絡めて、しっかりと握った。
眩く光り輝く魔法陣の中心にやがて一つの影が生まれた。
「はぁーい! お困りですかー?」
能天気な声とともに両腕を広げ、両足を揃えて軽やかに草原に着地したのは、見たことのない緑の髪の少女だった。
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