06:輝きに満ちた未来

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 年齢は十歳前後。  長い髪は三つ編みにして顔の両側に垂らし、愛嬌のある顔にはそばかすが散っている。  くりっとした大きな瞳は闇に灯る篝火のようなオレンジ。  華奢な身体に纏うのは緑と黒の縦縞模様のワンピースだった。 「ああ。お前のせいで困ってるんだよ、ドロシー・ユーグレース」 「ありゃっ? やだなー、お兄さん、ドロシーって誰のこと? あたしメグっていうんだけど?」  少女は左手の人差し指を顎につけ、可愛らしく小首を傾げた。 「とぼけるな。自分を召喚するための召喚魔法を巻物(スクロール)に保存できる魔女なんてお前以外にいるわけがない――」 「リュオン、待って。落ち着いて。ユーリ様の魔法を解きたくて焦る気持ちはわかるけれど、脅すような言い方をしたら駄目よ。それではメグさんも機嫌を損ねて帰ってしまいかねないわ。お願いをしたいなら、誠意を示さないと」  私はリュオンを嗜めて、メグと名乗った少女の前で屈んだ。目線を合わせて言う。 「こんにちは、メグさん……でいいのかしら? 私に巻物(スクロール)をくれたのはアマンダさんという女性だったのだけれど」 「あーそっか、アマンダさんだったか。こりゃうっかり。アマンダさんのほうがいいならアマンダさんに変身するよ?」  少女はこともなげに言って肩を竦めた。
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