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「……そんなに簡単に姿形を変えることができるのか。どれだけ探しても見つからないはずだ。姿形が定まらないものを見つけられるわけがない」
ユリウス様の独白は少女の耳に届いたらしい。
「ん? お兄さん、あたしを探してたの? 何かあたしに用事でも?」
三つ編みを揺らして、少女はユリウス様に顔を向けた。
「俺の顔に見覚えはないか、ドロシー。八年前、ラスファルの公園で俺は貴女に猫になる魔法をかけられた」
「……。……。あー!!」
少女は――やはりドロシーだったらしい少女は、しげしげとユリウス様を見つめた後で、ぱんっと両手を打った。
「思い出した!! この世の終わりみたいな顔で猫を抱いてた男の子かあ!! まー大きくなったわねー。人間の成長は早いわねー、そのうちよぼよぼのおじいちゃんになって死んじゃうんでしょうねー。いやー百年も生きられないなんて儚い生き物だわー」
「まるで百年以上生きているかのような物言いだな。気にはなるが、いまは追及よりも頼みたいことがある。俺にかけた変身魔法を解いてくれ」
ユリウス様は深々と頭を下げた。
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