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「――魔と生命を隔てる境は壊れよ。律は狂え。天秤は砕けよ。我は自壊と破滅を望む者――」
「ばっ――馬鹿!! 止めなさい!!」
リュオンの呪文を聞いた途端、ドロシーは血相を変えた。
「魔力の環は廻れ。朱く/紅く/緋く染まり、混沌に堕せ」
リュオンを囲うように通常の金とは異なる赤い魔法の光が次々と生まれた。数は五。
五つの赤い光はそれぞれが独自に動いて彼の足元に魔法陣を描き出す。
風が沸き起こり、彼の金髪が踊る。
魔法陣の赤い輝きに呼応するように、彼の瞳の中の《魔力環》が金から赤へと色を変えて苛烈に輝き始めた。
――これは何。彼は一体何をしようとしているの?
およそ見たことのない異変に身体が芯から冷える。
赤――暴走。危険。警告。
嫌な連想は恐怖となって私の心身を食い破るように蝕んでいく。
「止めなさいってば!! 死んじゃうわよあんた!! なんでそんな魔法知ってるのよ!? それは魔女の禁じ手、絶対やっちゃダメなやつでしょうが!!」
すっかり余裕を失くしたドロシーが慌てふためいている。
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