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「常日頃から旦那様の問題行動に悩まされていた侍女仲間からは拍手喝采を浴び、よくやったと絶賛されたわ。でも、意識を取り戻した旦那様はそれはもう、怒り心頭で。二度と顔を見せるなと叩き出されたの」
「…………」
リュオンは何かを考え込むように沈黙し、やがてため息をついた。
「……とにかく最悪の事態は免れたようで何よりだ。その富豪の名前を教えてくれ」
「え」
「悪いようにはしない。セラにも侍女たちにも決して迷惑はかけないと誓うから」
リュオンの青い目は真剣そのもの。
瞳孔の周囲で淡く光る金色の輪が綺麗だ。
どうしよう。
信じても大丈夫……かな?
「……西区に住む豪商、ブードゥー・ラビカよ」
迷いを振り切って、私はその名を告げた。
「あいつか……」
「知ってるの?」
尋ねると、リュオンは苦笑した。
「ラビカ商会を知らない人間なんてこの街にはいないよ。ブードゥーはおれの主人とも深い付き合いがあるからな。帰ったら主人と相談してみる。再び被害者が出ることのないよう善処する」
「ありがとう。後に残った侍女仲間のことは心配だったから、そうして貰えると嬉しいわ」
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