06:輝きに満ちた未来

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 彼の呪文通り、生まれた魔法陣の数は十三――出鱈目な数だった。  戦慄が全身を駆け抜け、皮膚が粟立つ。目に映る光景が信じられない。これは戦略級魔法――ラスファルの街を一撃で壊滅させられるほどの威力を持つ魔法――に匹敵する大魔法だ。通常ならば卓越した魔法の使い手である宮廷魔女が十人以上で使う大魔法を、リュオンはたった一人で使おうとしている。  回転する十三の魔法陣のうち、一つとして同じ種類の魔法陣はない。  五芒星が描かれているもの、複雑な幾何学模様が描かれているもの、謎の文字が描かれているもの。  これまで色んな魔法書を読んできたけれど、それぞれがどんな効果を持っているかなんて見当もつかない。  でも、リュオンの呪文の内容からして、とんでもなく危険なものだということはわかる。早く止めなければ。一刻も早く。 「止めろと言ってるだろう!! 本当に死ぬ気なのか!? お前がいなくなったら誰がセラを守るんだ!? 馬鹿な真似はよせ!!」  ユリウス様の叫びは焦燥に満ちているが、やはりリュオンは反応せず、ひたすら呪文を唱え続けている。 「――っ」  近づきたいのに、彼を中心として荒れ狂う風のせいで近づけない。大地に深く根付いてるはずの草が風に煽られていくつもいくつもちぎれ飛んでいく。  私が移動したことでドロシーからリュオンに増幅魔法の効果対象が移り、もとより大きな彼の魔力量がさらに跳ね上がっているのだろう。魔法陣の輝きと暴風は勢いを増す一方だった。お仕着せのスカートはバタバタと揺れ、長い髪が頭皮ごと引っ張られて痛い。  近づくどころか立っているだけで精一杯。気を抜けば吹き飛ばされそうだ。  リュオンが放出する膨大な魔力に大気がびりびりと震えている。  リュオンは全ての魔力を費やしてドロシーを倒そうとしている。ドロシーが私を害する素振りを見せたから。私のために、私を守るために、本来勝てるはずもない相手を命懸けで倒そうとしている。
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