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「リュオン、もう止めて、もういいの!! 一緒に星を見るって約束したでしょう!? 私の声が聞こえないの!? ねえ、お願いだから――」
「冥暗より昏き怨嗟/生者の慟哭/死者の叫號/唱えるは業報の呪詛。連なりし十三の環を以て共鳴せよ同調せよ蹂躙せよ――」
忘我の境地をさまよっているリュオンの瞳は虚ろで、どんなに叫んでも私の声は届かない。
私を守る。その一心で全てを捨ててしまっている。
彼は命を擲つほど強く私を想ってくれている。それが堪らなく嬉しくて、泣きたくなるほどに悲しい。
もし彼が死んでしまったら。
太陽を失った世界で、私はどうやって生きればいいというのか――
――おれが死んだら嫌?
思い出す。私を戯れに抱きしめたリュオンの体温。私の耳元で彼は尋ねた。からかうように、ほんの少し笑みを含んだ調子で。
ああ、いまなら言えるのに。
リュオンがいなければ私は生きていけない。あなたを愛している。心からそう伝えるのに――
突然、荒れ狂っていた風が止んだ。
はっとして見れば、ノエル様を説得したらしいドロシーが立ち上がり、右手をリュオンに向かって突き出している。
彼女のおかげで行く手を阻む風が止んだ。悟った。いまが好機だ。
リュオンを止めて、気持ちを伝えられるのはいましかない。
私は無我夢中で飛び出し、リュオンの頬を両手で掴んで引き寄せた。呪文が唱えられないように自分の口で彼の口を塞ぐ。
「――――!?」
虚ろだったリュオンの瞳が驚きに見開かれる。
自我を取り戻した彼は確かな意思をもって私を見た。
「リュオン。好きよ。あなたが好きなの」
数秒して身体を引いた私は赤い《魔力環》が輝く彼の目をまっすぐに見つめて言った。
「………………え?」
リュオンは呆けて私を見返した。
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