06:輝きに満ちた未来

45/62
前へ
/239ページ
次へ
 周囲に浮かぶ十三もの魔法陣が、まるで溶けた飴細工のようにぐにゃりと歪む。  けれど魔法陣に起きた異変には気づかなかった。私の目はリュオンだけを見つめていたから。 「出会ったときからあなたのことが好きだった。あなたが私の手を握って笑ったあの瞬間、私は恋に落ちていたの」  魔法陣が崩れ、そのうち三つほどが形を保てず赤い光の粒子になった。 「愛してる。あなたがいないと私は生きていけない」 「……き、急に何を……気持ちは嬉しいけど、いまはそれよりドロシーを倒さないと」  リュオンは赤面して目を泳がせた。  彼の動揺を表すように、ぐにゃぐにゃと魔法陣が歪み、崩れていく。 「『それより』って何!? いま他の女性のことなんてどうでもいいでしょう! 私は真剣なのよ!」  私はぴしゃりとリュオンを叱りつけた。  一筋の血が流れている彼の顔を再び両手で挟み、自分だけを見るよう真正面に固定する。 「いや、そういう意味じゃなくて……何この状況? おれはさっきまで命懸けで戦っていたような……」  リュオンは混乱しているようだが気にしない。
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1964人が本棚に入れています
本棚に追加