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周囲に浮かぶ十三もの魔法陣が、まるで溶けた飴細工のようにぐにゃりと歪む。
けれど魔法陣に起きた異変には気づかなかった。私の目はリュオンだけを見つめていたから。
「出会ったときからあなたのことが好きだった。あなたが私の手を握って笑ったあの瞬間、私は恋に落ちていたの」
魔法陣が崩れ、そのうち三つほどが形を保てず赤い光の粒子になった。
「愛してる。あなたがいないと私は生きていけない」
「……き、急に何を……気持ちは嬉しいけど、いまはそれよりドロシーを倒さないと」
リュオンは赤面して目を泳がせた。
彼の動揺を表すように、ぐにゃぐにゃと魔法陣が歪み、崩れていく。
「『それより』って何!? いま他の女性のことなんてどうでもいいでしょう! 私は真剣なのよ!」
私はぴしゃりとリュオンを叱りつけた。
一筋の血が流れている彼の顔を再び両手で挟み、自分だけを見るよう真正面に固定する。
「いや、そういう意味じゃなくて……何この状況? おれはさっきまで命懸けで戦っていたような……」
リュオンは混乱しているようだが気にしない。
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