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「……いいえ。嫌じゃないわ。頭を撫でられるなんて久しぶり……というか、記憶にある限りでは初めてだったから。戸惑っただけ」
「両親に頭を撫でられたことはなかったのか?」
「……両親の愛は全て妹に向けられていたから。婚約者だったクロード王子もエスコートが必要な場面以外で私に触れたことはなかったわ」
リュオンは俯いた私の頭を再び撫でた。
さっきより手つきが優しくなったせいで、余計に涙が溢れ出す。
「…………っ」
左手から力が抜けて鞄が地面に落ちた。
両手で顔を覆い、肩を震わせる。
誰にも愛されなくて辛かった。苦しかった。
振り向かない背中が悲しくて、寂しかった。
十七年間、必死で抑えつけてきた感情が爆発して涙が止まらない。
リュオンは持っていた袋を足元に置き、壊れ物を扱うような優しさで私を抱き寄せた。
きっと彼は私が自然と泣き止むまで待ってくれるのだろう。辛抱強く。それこそ、何時間でも。
彼の腕の中で泣きながら私は小さく笑った。
――リュオンはこれまで出会った誰よりも優しい人だ。
昔は私の方が背が高かったのに、いまは彼の方が高い。
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