02:ようこそエンドリーネ伯爵家へ

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「もちろん泣くようなことがないのが一番だけどな。そこで一つ提案があるんだが。おれが紹介するから、セラもエンドリーネ伯爵に仕えないか? 近くにいればおれがセラを守れる。万が一ブランシュ家から追っ手が来てもおれが全部追い返してやるよ」 「き、気持ちは嬉しいけれど。伯爵は魔女でありながら何の魔法も使えない私を受け入れてくださるかしら。侍女の数ならもう足りているんじゃ……」 「伯爵は慈悲深いお方だ。セラの事情を知ればきっと力になってくれる。その代わり、セラも力を貸して欲しい」 「力を貸す……?」  単純に侍女として求められるのとは違うらしいということを感じ取って、私は俯き加減のまま、上目遣いにリュオンを見上げた。 「伯爵の長男――ユリウス・エンドリーネは少々訳ありでな。いまは引きこもり状態なんだ。おれが主人の事情を勝手に話すわけにもいかないから、詳しくは伯爵かユリウス本人から聞いてくれ」  ラスファルの街を治める領主、バートラム・エンドリーネの住居は丘の上に建っていた。  丁寧に舗装された煉瓦敷きの坂道を辿って行けば、やがて三階建ての白亜の館に着く。
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