02:ようこそエンドリーネ伯爵家へ

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 これは想像以上だわ……。  由緒正しい世襲貴族が住むに相応しい立派な館を見上げて、私は呆然。  伯爵令嬢だった頃に住んでいた家と比較しても、この大きさは尋常ではない。  完璧に整えられた庭には噴水や池があり、見たことのない色鮮やかな魚が泳いでいる。  これが公園ではなく個人の庭園だという事実が信じがたい。 「これが本館で、ユリウスは弟のノエルと一緒に向こうの別館に住んでる」  左手に買い物袋を抱えているリュオンは本館の前で足を止め、右手で広大な庭園の一角を示した。  そちらを見れば、庭園の一角にまた別の三階建ての建物がある。  茶色の壁に白い窓、三角に尖った屋根。  前庭ではピンクや赤、白の薔薇が咲き乱れ、建物の横には贅沢にも硝子囲いの温室が建っていた。  さすがレアノールの十倍はある大国の伯爵だ。  レアノールの公爵でもこんな豪華な屋敷には住んでいなかったというのに、似たような別館まであるとは……。  呆気に取られている私をよそに、リュオンは真鍮製のドアノッカーで本館の玄関扉を叩いた。 「お帰りなさいませ、リュオンさん」
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