01:逃亡のその先に

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 母は絹のハンカチで目元を拭い、父は感極まったように目を潤ませている。  隣で傷ついている娘のことなど一瞥もしない。  この人たちは本当に私に関心がないのだということを痛感させられただけだった。  私は一体、何度期待して裏切られれば気が済むのだろう。 「まあ酷い。でも、たとえイノーラと同じ神聖魔法が使えたとしても、クロード王子はセレスティアではなくイノーラを選んだでしょうね。イノーラのほうが遥かに華があって美人だもの。《国守りの魔女》と結婚したとなれば国民の求心力も得られるでしょうし、セレスティアよりイノーラのほうが良いに決まってるわ」  ナイフのような言葉は私の心を抉り続ける。 「イノーラも凄いわよねえ。蝶よ花よと育てられたおかげか、あの子は昔から我儘な暴君で、セレスティアのものは片っ端から奪っていったでしょう? でも、まさか恋人まで奪うとは思わなかったわよ」 「セレスティアもよく結婚式に出席したわよね。見てよあれ、笑ってるわ。信じられない。一体どういう神経をしているのかしら。案外この状況を楽しんでいたりするのかしら?」
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