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ロドリー王国は夏の初め。
空は青く澄み渡り、街路樹の若葉は誇らしげに風に揺れる。
公園では子どもたちが駆け回り、恋人たちがベンチで愛を囁き合う。
ラスファルの街は至って平和で、道行く人々は誰も彼もが幸せそうに見えるというのに。
私は失意のどん底にいた。
とある富豪の館で住み込みの侍女として働いていた私は、ついさきほどその職を失い、罵倒の言葉と共に館から追い出された。
荷物は左手に下げた鞄一つ。
着替えの服とはした金しか入っていない財布、それからお気に入りの本が一冊。
所持品はそれだけだ。
旦那様は紹介状をくれなかったから、次の仕事の当てはない。
いやまあ、あの状況で紹介状なんて書いてもらえるわけがないんだけども。
大いに差し迫った状況である。
これからどうやって生活していけばいいんだろう……先が見えない。真っ暗だ。
職業斡旋所に行かないと……でも、家のない私を雇ってくれる人はいるかしら。
肩を落とし、人でごった返した市場を歩く。
道の左右には露店商人たちが列を作り、威勢のいい呼び込みの声があちらこちらから上がっている。
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