01:逃亡のその先に

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 十七年生きていてこれほど悲痛な悲鳴を上げたのは初めてだ。  あまりのことに膝を落とし、四つん這いになって串焼きを見下ろす。  愛しの串焼きは砂に塗れてしまっている。  いいえ、なんのこれしき、洗えば食べられる!  たとえ塩が洗い流され、味がなくなっても肉は肉!  人間、食べなきゃ死ぬんだから!  他人の視線が何よ、矜持で腹は膨れない!  恥も外聞もかなぐり捨てて手を伸ばす。  けれど、私が拾い上げる前に、串焼きは通行人の足によって踏み潰された。 「ああっ!?」 「うわ、なんか踏んだ。汚ねえ」  若い男性は顔をしかめ、靴の底を何度か地面にこすりつけて去っていった。 「………………あああ……」  終わった。  四つん這いになったまま、私は伸ばしかけた手を下ろし、深く深く項垂れた。  いくら空腹とはいえ、さすがに他人の靴で踏み潰された串焼きを食べようとは思えない。  私の全財産が……貴重な栄養源が……。 「大丈夫ですか? すみません、ぶつかってしまって……」  申し訳なさそうに屈んで声をかけてきたのは、左手に茶色い袋を抱えた端正な顔立ちの男性だった。
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