弾きだされたルカ

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弾きだされたルカ

2章 永遠の凍結  私は「時の加護者」アカネ。 研究所から魔人ルカを救い出し異世界へ送り届けた私たちは、再び現世に戻ってN国の最高指導者へお仕置きをしてきたのだけど..それっていけない事かな?でも、ちょっぴりだけだし別にいいよね?ね? —フェルナン国 運命の祠—  「アカネ、お前、現世の人間を殺してなどいないだろうな? 」  帰って早々、ジト目をするシャーレに質問される。  「してないよ、ほんと。ただ.. 」  「『ただ.. 』なんじゃっ!」  「ただ.. 少しお灸を据えただけだよ。あいつ、すっごい悪い奴なんだよ」  「アホっ! 異世界の者が現世に影響与えてどうするんじゃ! 」  「げ、厳密にいえば、私は現世の人間なんだから、これはセーフ案件よ!そう、セーフ 」  「ふんっ、屁理屈を言いおって.. 」  「ところでさ、ルカの具合はどう? 」  そう質問したところで、祠の奥の部屋にルカを寝かしつけていたローキがやってきた。  「アカネ様、シエラ様、ありがとうございます。このローキ、心の底より感謝申し上げます」  「そんな、いいよ。ローキ、頭上げてよ」  「そういうわけにはいきません。アカネ様の世界の何人もの命を犠牲にしました。このローキ、その償いにどのようなことでもする所存でございます」  「『償い』って.. 仕方がないではすまないけど、ルカを現世に彷徨わせてしまったのも、もとをただせば私たちの闘いの末に起きたことだし」  だが、その時、ローキが奥歯を嚙み締めたのをシャーレは見逃さなかった。  「ローキ、貴様、知っておるのだな。なぜルカが現世に飛ばされたのかを.. 」  「飛ばされた? 」  「そうじゃ、アカネよ、現世と異世界にある『時の狭間』は、お前が思う以上に強固な壁なんじゃ。実際、『時の加護者』の懐中時計が必要なのだからな」  「ねぇ、 ..ローキ、何か知っているの? 」  「これは私の憶測でしかありません。あの時、あの魔界がまるで風船がはじけるように無くなった瞬間、私たちが魔界から飛ばされたことは事実です。しかし、魔界から飛ばされたとしても、せいぜいこの世界に飛ばされるだけです。しかしルカはそれを飛び越えて現世へ。こんなことができるのはドルヂェが持つ『千手の恕(せんじゅのじょ)』しかないのです」  「ローキ、お前は前にドルヂェの能力を知らないととぼけていたな。ドルヂェの能力を言え」  「すいません、シャーレ様。本当は私の手で真相を掴みたかったのですが.. ドルヂェの能力は黙劇と慈愛です。ドルヂェは一定の時間、人の能力を模倣することが出来ます。そして現世、この世界、魔界の三世に『千手の恕』として手を伸ばすことが可能なのです。ルカはその「千手の恕」によって現世に飛ばされたと思われます.. 確証はありませんが.... 」  「真相はルカのみぞ知る..か」  シャーレの言葉で場が静まり返ってしまった。  「と、ところで、ルカの容体はどう?」  「あまり芳しくありません。指の欠損などの回復は難しいでしょう。私たちは元々意志を持つ魔素。依代の肉体を再構築するには魔素の理力が少なすぎます」  「私、養生するのに凄く良い場所知ってるよ」  「良い場所? 」  「うん。それはね、ナンパヒ・ラカイ..マヒ.. のルル診療所ってところ」  「ああ、それは無理じゃ。確かにあそこには全ての力の源がある。魔人の治癒とて例外ではないだろう。だが、守護者が魔人の立ち入りを許すはずがない。それに島は今、移動中じゃ。なかなか見つかるものでもない」  「ふふふ、それには考えがあるんだ。ちょっと、シュの山のシドに相談してくるね」  私とシエラはシュの山へ向かった。 ——シュの山・サイフォージュの森—  「アカネ様、それ以上境界線に寄ると、面倒くさい奴らが来ますよ」  「うん、わかってる。でも.. 」  確かにそうなのだが、前は.. いや、失われた時間ではラワン部隊のサーシャがシドの泉まで案内してくれた。では、今はどうなのだろうか?  そのとき[ザカ.. ザカ..]と馬が土を蹴る音が聞こえた。  「あっ! アカネーッ!! アッカネー!! 」  遠くから声をあげて馬を走らせて来たのはフェルナン国王女ラヴィエだった。  「ラヴィエ!! 」  「なんだぁ。こっちの世界に来ているなら言ってよ。ところで、2人で何やってるの? もしかして、2人もクリスティアナに呼ばれたとか?? 」  一瞬、驚いてしまった。なぜなら、白亜事変の時、ラヴィエは6年の時の経過で24歳だったからだ。それが今は元の18歳に戻っている。  「違うけど.. クリスティアナに呼ばれたって食事会とかするの? 」  「あははは、それなら喜ばしいんだけど、生憎そうじゃないの。詳しくはわからないんだけど、たぶん、最近頻繁に起きている行方不明や急死に関係していると思う」  「行方不明? 急死? 」  「そうなの。フェルナン国内では急にいなくなった人がたくさんいたのよ。でもそれはフェルナンだけじゃなくて各国でも同様だったの」  そうか.. シャーレの言っていた『運命は変わらないことが多い』とはこういう事だったのか。たぶん、いなくなった人々は白亜事変で命を落とした人々なんだ。この時間は戻された時間ではない。取り消された6年の先にある時間に広がる世界なのだ。だから肉体を無くした者。つまり死者は急に行方不明になってしまうんだ。そして急死は、おそらく現世でルカの闇炎で焼かれた人々に違いない。現世での死とは魂で繋がるこの世界の死に直結しているのだ  「もしかして.. アカネ、何か知っているの? 」  「ねぇ、ラヴィエ、私も一緒にクリスティアナの所へ行っていい? そこで話すよ」  私たちはシドの泉へ行く前にクリスティアナに謁見する事となった。
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