四国会談

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四国会談

2章 永遠の凍結  私は「時の加護者」アカネ。  光鳥シドに会うためシュの山に訪れた私は偶然にもラヴィエと再会した。ラヴィエはカイト国のクリスティアナ女王に呼ばれたというのだ。世界で起こる異変、違和感についての話し合いが行われるらしい。異世界アーリーの現状を知るために私も同行させてもらうことにした。 —カイト国 大広間—  ラヴィエとともに大広間へ入室するとクリスティアナは私の姿を見て驚いていた。だけど、驚いたのはこちらの方だ。なぜなら、その場にはクリスティアナのほかにギプス国王スタン、レオ国女王レイフュ、そして光鳥シドの姿まであったからだ。  「ラヴィエ殿、なぜ「時の加護者」様がここに?」  「ああ、それはね、私が光鳥シドに会いに来たからなの。そしたら偶然ラヴィエに会って、連れてきてもらったの。まずかったかな?」  クリスティアナはシドの顔をうかがった。  「いいえ、アカネ様。これは良い機会です。実は消された6年の記憶は私にも残っておりますが全てを知っているわけではありません。当事者であるアカネ様から消された6年についてお話していただけますか?」  ラヴィエをはじめ各国の王は顔を見合わせていた。  「あの、アカネ..消された6年って何?」  私は未来からやってきたハクアの事と白亜事変のこと、さらに「法魔の加護者」の誕生により世界に魔法という概念が出来上がったことを説明した。  そしてただ平和を望んだ「秩序の加護者」の不用意な言葉によって6年間が取り消されてしまった事を付け加えた。  やはり、こんな言葉だけの説明だけではラヴィエでさえ困惑するだけだった。しかし、魔人ダリと魔人ジャクを目の前にしたばかりのクリスティアナは、意外にもこの事実をすんなり受け入れていた。  そして四国会談が始まり各国の急死者や行方不明者の状況を報告しあったが、私の説明により原因の可能性を話し合うまでもなくなった。  行方不明者とは6年間の間に死んだ者たちであり、大量の急死者とは現世でルカの暴発に巻き込まれた人々の死によって起こされたものなのだ。  なぜなら現世と異世界の人々は魂に繋がりを持っているからだ。 ・・・・・・ ・・  「ありがとうございます、アカネ様。これで各国の王は納得できたかと思います。ただその遺族や関係者が納得できるかは別ですが..ところでアカネ様、このシドに用件があると言っておりましたが、それは何でしょうか?」  「あ、そうだ。シド、私、ナンパヒ島へ渡りたいの。だから、その....羽根をひとつもらえないかな?」  魔人ルカの治療に「ルル診療所」を利用したいと伝えると、シドは少し考えたのちに答えた。  「 ....おそらく、それは難しいでしょう。守護者たちが魔人を島へ上陸させるとは思えません」  「..そっか..ダメかぁ」  「しかし、それは私が決める事でもありません。わかりました。私の羽を持って行くといいでしょう」  「ありがとう、シド」  私がシドから羽を受け取ると疑義を唱えたのは、やはり、クリスティアナだった。  「私は納得できません。もっと疑うべきでは? その魔人どもに企みがあるのかもしれませんよ」  「クリスティアナ、あなたの気持ちはわかる。魔人を目の前に、しかも雷を落とされそうになったのなら。ただ、私はアカネ様を信じたい。どうだろう?」  猜疑心の権化と揶揄されるクリスティアナを説得するのは、太陽の国レオの女王レイフュだった。  「レイフュ.. 」  「大丈夫、何かあれば、みんなで力を合わせる事もできる。今はアカネ様を信じてみない?」  レイフュはクリスティアナと古くからの友達であり、クリスティアナを説得するのにレイフュの右に出る者はいないのだ。この場にレイフュがいたことは幸運だったと言える。  もともと今回の会談は早急だったため、東の大陸のレオ国レイフェ女王は招かれてはいなかった。たまたまレイフェはスタンにある事を相談しにギプス国に来ていたのだ。  それは太陽の国レオから北にある王国シェクタの変化についてだった。それまでは友好関係にあったシェクタ国がまるで別の国のようになってしまったのだ。  ある日を境に変貌したシェクタ国。隣国であるレオ国にとってはあまりにも不気味である。  だが、その疑問も今回の会談である程度の謎は解けたようだ。  レイフュがこの会談にいたことは先にも言った通り私には幸運だったが、レオ国にとっても実りのあるものとなった。  シェクタ国への警戒を他国と共有することができたからである。  「アカネ様、くれぐれもお気をつけて」  シドは私に羽根を手渡し、みんなに一礼すると姿を消した。  そして同時に四国会談は終了となった。  各国の首脳が帰る中、私はスタン王を呼び止めた。  ロッシが急にいなくなった理由をラジス峡谷の事件を踏まえて説明したかったからだ。  「なるほど..護衛のロッシはそれで姿を消したわけですか。カレンは幸せ者ですね。そのような男に最後まで愛されたのだから。 ..わかりました。今度、ギプスに来た時、カレンに声をかけてやってください。今のカレンには、何も残っていないでしょうから」  「はい、スタン様。あの..カレンの記憶は残ってないけど、ロッシの想いはきっと今もカレンの心に残ってると思います」  「ありがとう」  スタン王は私に笑顔を向けるとレイフュ女王とともに部屋を出て行った。  「アカネ、これからどうするの? 運命の祠に帰るんでしょ? 」  ロッシの話を聞いたラヴィエの声はうわずっていた。  「ラヴィエ、実は、アコウの力を借りたいの。私がナンパヒ島に行っている間に、シャーレの護衛に付いていて欲しいの。だから私も王都フェルナンに一緒に—」  「いや、いいよ。アコウにはこちらから『運命の祠』へ向かわせるから。それよりも『ルカ』という魔人の回復を急いであげて」  「うん。ありがとう、ラヴィエ」  ラヴィエと抱擁をしたあと、私は「運命の祠」へ戻ることにした。  だが、私たちがこのカイト国に滞在している間、伝説の剣を持つ者が「運命の祠」に歩を進めていた。
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