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化粧を施した頬が熱を帯びていく。
その一言だけでもうお腹いっぱいです。
舞踏会場で何も食べられなくても悔いはありません。
「俺に貴女と踊る栄誉をくださいますか?」
本気で私を女神扱いするつもりなのか、ルカ様はことさら恭しく手を差し伸べた。
「もちろんです。ダンスのお相手はあなた以外に考えられません」
私は笑って手を重ね、ルカ様にエスコートされて歩き始めた。
会場へと向かう貴族たちに交じって幸せな気分で回廊を歩いていると、急にルカ様が笑った。
「どうしたんですか?」
「やっと念願叶ってお前と踊れるなと思っただけだ。ラークやシエナには練習相手をさせたのに、俺と一緒には踊ってくれなかっただろう?」
楽しみは本番まで取っておきたかったんですと弁解する暇もなく、ルカ様は言葉を続けた。
「ディエン村でも次々とダンスに誘われるお前をただ見ているだけだった。あのときは空気を読んで我慢していたが、今日は遠慮しないからな」
「はい。思いっきり楽しみましょう」
そのために――ルカ様の隣に並びたいがために、私はこれまで努力してきたのだから。
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