05:夜を駆ける

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 プリムの話によれば、ノクス様にかかっている術式の名前は《百度目に喰い殺す蛇》――その回数に応じて酷くなる頭痛を引き起こし、頭痛の回数が百回目になると確実に死ぬという厄介なもの。  術式を発動するために必要な呪術媒体は二十個らしいので、残りあと一つを破壊すれば術式は解けるはずなのだが―― 「……本当にこれか?」 「ええ。この絵よ」  王宮の二階。  ギャラリーにずらりと展示された絵の中で、プリムが指さしたそれを見て、さすがのラークも嫌そうに顔をしかめた。  プリムが指さした先にあるのは、金の額縁に収められた美しい女性の肖像画。  緩やかに波打つ金糸の髪。  その瞳はノクス様と同じサファイアだ。  左目の下にぽつんと黒子があり、白い肌の中で目立っていた。  女性は王族の椅子に腰かけ、下腹部の上で両手を重ね、穏やかに微笑んでいる。  肖像画の下にあるキャプションは『慈愛の微笑みを浮かべるドラセナ王妃』―― 「ああ……」  よりによってこの絵が呪術媒体に選ばれたのかと、私は小さく呻いた。  同時に、術者への恨みがより一層募る。
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