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だって、この絵は、ルカ様が以前私に見せてくれたものなのだ。
――兄上が教えてくださったんだ。このとき母上の腹の中には俺がいたんだ、と。もう母上はこの世に存在せず、お会いすることもできないけれど、この微笑みを見れば、どんなに母上が俺の生誕を待ち望み、愛されていたのかわかるだろう、と。
ルカ様はとっておきの宝物を見るように目を細め、嬉しそうな声でそう言った。
ギャラリーに展示されている王妃様の絵は他にも数点あるけれど、ルカ様が描かれている絵はこの絵しかない。
唯一ルカ様が描かれた尊い母子の絵なのに、私はこれからこの絵を破壊しなければならない。
「どうする? 壊すの止める?」
プリムが私の傍にやって来た。
何も言えずにいると、プリムは七色の瞳を眇めた。
「あたし、言ったわよね。たとえ全ての呪術媒体を破壊したところで無意味だ、ノクスは死ぬって。だって、呪術ってそういうものだもの。死ぬほど面倒くさい手順と時間、それを費やす狂気があれば、相手が誰だろうと一方的に命を奪える。一度発動してしまえばそれで終わり。根性の腐った下種が生み出した悍ましい外法、それが呪術よ」
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